高齢者の定義を75歳以上とする提言が公表された。
高齢者が元気になっていることを踏まえれば、適切な考えだ。
必要なのは、高齢者が働く社会を実現することだ。しかし、現在の日本の制度では、高齢者は働かないほうがトクになる。これを見直し、働くことが正当に報われる社会をつくることがまず第一歩だ。
「働かない年金生活者」という
イメージをなくせ
日本老年学会などは、現在65歳以上とされている高齢者の定義を、75歳以上に見直すべきだとする提言を発表した。
この提言の基礎には、高齢者の身体・知的能力や健康状態が改善しているという事実がある。上記学会が高齢者に関する国内のデータを収集、分析したところ、ここ10~20年の間に、5~10歳程度、若返っていることがわかったという。とくに65~74歳は、心身の健康が保たれ、活発な社会活動が可能な人が多いので、「准高齢者」という新たな区分で呼び、就労やボランティアに参加できる枠組みを創設すべきだとしている。
これは、多くの人が実感していたことだろう。私自身も常々そのように感じていた。
名前や呼び方は重要である、実態が変わったにもかかわらず名称が変わらないため、古い観念にとらわれる場合が多いからだ。
実際、65歳以上を高齢者と呼ぶと、「働かない年金生活者」というイメージになる。そうした観念が一般的だと、働くのは不自然と言うことになりかねない。
「後期高齢者」などと言うと、もはや余生も少なく、働くことなど考えも及ばないというイメージになってしまう。そして、医療費の自己負担を低くするのもやむをえまいという考えになる。
しかし、これらのいずれも、現在の日本の実情を考えれば、見直しの余地があるものだ。「客観的条件が変わっているのだから、考え方を変えるべきだ」という上記の提言は、まことに適切なものと考えられる。