怒りは二次感情

 「皆さんは、デートの時に相手が大遅刻してきた経験はありますか?」
 「そして、その時にすごく怒った経験はありますか?」

 この質問を私が実施したアンガーマネジメントの講習会で何度もしているのですが、手が挙がらなかったことはありません。つまり、この経験はかなり普遍的なものであるといえます。ただ、その時の状況を詳しく聞いてみると、ずいぶん個人差があるのが興味深い点です。

 「雪が降っていた」
 「横を通る人がすごく多かった」
 「横で子どもがギャン泣きしていた」
 「幸せそうなカップルが目の前を何人も通り過ぎた」」
 「雨が降っていて服が濡れていた」

 いろいろなシチュエーションがありました。

 一方、「デートの遅刻が気にならなかった」という人も、これまた多くいます。その時の状況を聞いてみると、

 「どうしても先を読みたい推理小説に没頭していた」
 「スマホのゲームに夢中になっていた」
 「目の前で大道芸人がショーをやっていた」
 「ぽかぽか陽気で青空を眺めているだけで幸せだった」

 といった感じで、「待たされている」という感覚を持っていない状態だったのがうかがい知れます。

 この状態を言語化するとどうなるのでしょう?実は、ここにアンガーマネジメントの根幹に迫る事実があります。

 それは「怒りは二次感情である」ということです。

 デートの遅刻に怒った人は、

 「雪が降っていた」→「寒かった」
 「横を通る人がすごく多かった」→「うっとうしかった」
 「横で子どもがギャン泣きしていた」→「うるさかった」
 「幸せそうなカップルが目の前を何人も通り過ぎた」→「くやしかった」
 「雨が降っていて服が濡れていた」→「気持ち悪かった」

 つまり、遅刻する前に、別のことでイライラが募っていたのです。

 これをアンガーマネジメントの観点では「一次感情で、感情のコップが満たされてしまっていた」と定義しています。そして、遅刻して現れた相手に対して「二次感情としての怒り」をぶつけたのです。怒りは、「二次感情」であり、単体でポツンと存在するものではないのです。何かしらの一次感情によって、心の中にある感情のコップが満タンになったところに、ちょっとした出来事によって怒りという二次感情が沸き上がるのです。これこそが、アンガーマネジメントの理解を深めるためにもっとも大事なポイントになります。

 次回から、アンガーマネジメントをより深く理解するための「3つの暗号」をご紹介します。

(日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 澤円)