「同一労働同一賃金」とは、このような「グローバリゼーション」「新自由主義改革」による正社員と非正規労働者の格差拡大とその固定化に対する嫌悪感がある。そして、その嫌悪感の裏返しには、「新自由主義改革」以前の「誰もが正社員」で、年功序列・終身雇用を謳歌できた「高度経済成長期」に回帰したいとの願望がある。

「非正規動労者の待遇を正社員に
近づける」は論理的整合性を欠く

 しかし、「同一労働同一賃金」が復古趣味的で、国民の感情に訴える政策であるために、トランプ氏の雇用拡大策と同様に、論理的整合性を欠いたものとなっている。

 安倍政権は、昨年12月20日に「同一労働同一賃金ガイドライン(案)」を発表し、「同じような能力・経験・成果を上げた労働者は、給与・賞与はもちろん、各種の手当等についても平等に処遇されなければならない」という基本的な考え方を打ち出している。

 この考え方自体は目新しいものではない。安倍政権登場前の、民主党政権期から、何度も導入が検討されてきたが、実現が難しかっただけである。導入が難しい理由は、日本企業では正社員に対する「職能給(能力に応じた賃金)」制度が定着しているからだ。その上、勤続年数を重ねると賃金もアップするという年功序列的な賃金制度が採用されてきた。

 これは欧州で一般的であり、同一労働同一賃金導入の前提となっている「職務給(仕事に応じた賃金)」とは異なるものである。換言すれば、現行の年功序列の賃金制度は「特定の人に仕事をつける」仕組みであり、「特定の仕事に賃金が結びつく」仕組みである「同一労働同一賃金」とは、なじまないものなのだ。

 また、日本企業においては、総合職(現在でも主に男性)の「正社員」は、勤務場所を自ら選択できなかったり、頻繁な配置転換があったりする。それは企業にとって、将来の幹部候補生を、さまざまな経験を積ませることで育成する仕組みである。つまり、正社員の給与には、単なる業務に対する賃金ではなく、会社にとって重要な、高度な経営業務に就くための準備をする部分が加算されている。それが年功賃金の上昇カーブとなり、非正規労働者との「格差」を広げることになっている。

 要するに、日本型雇用システムの下では、正社員と非正規労働者の格差解消は、単純に給与を同じにすればいいわけではないのだ。それならば、勤続年数が同じ非正規労働者に、正社員と同じ年功賃金を適用すればいいのかというと、そういうわけにもいかない。有期雇用の非正規動労者は、年功賃金のメリットが生じる前に雇用期間が終了してしまうので、格差解消に効果がないからだ。