貧困の連鎖を断ち切るためには、教育が重要だ。生活保護は、高校を卒業するための大きな力になり得るだけではなく、高校在学中に「人生を変える」ための様々な機会も同時にもたらす。「高校教育だからこそ」の意義や役割は、何なのだろうか。そこで生活保護が果たすことのできる役割は、何なのだろうか。
高校生なら生活保護で1人暮らしも
恵まれない子どもに指す一筋の光
福岡市で一般社団法人ストリート・プロジェクト(以下ストプロ、2017年3月に活動休止予定)の理事長を務め、困難な状況にある15~25歳の「ユース」たちを支えて伴走する活動を行ってきた坪井恵子さんは、ユースたちの高校卒業までを支える力として、生活保護に期待している。生活保護は、家庭に困難がある高校生の高校卒業までとその後を支える力を持っている。
ストプロが伴走してきたユースたちのほとんどは、連載第77回で述べたとおり、生育環境の中でネグレクトされてきている。生活保護世帯の場合には、親が子どものためのお金を使い込んでしまっており、子どもに適切な衣食住を与える養育を放棄してしまっている場合もある。時には、子どものアルバイト収入や奨学金を“搾取”する親もいる。すると子どもは、せっかく進学した高校を中退せざるを得なくなりかねない状況に陥ることになる。
親や生育環境を選んで生まれてくる子どもはいないが、子どもにとって親は絶対的な存在であり、愛着の対象だ。親から壮絶な虐待やネグレクトを受けている子どもたちが、親への愛や思いやりを語るとき、私は返答の言葉に詰まる。子どもが生育するうちに「ウチはおかしいかも」「自分のされていることは躾でも教育でもなく虐待かも」と気づいても、親のもとから安全に逃げる方法は限られている。
「けれども、ネグレクトなど家族関係や親子関係の問題があり、それが子どもの現在の障害となっており、将来の可能性も狭めていることが明らかな場合、子どもが高校生だったら、家族と別居して1人暮らししながら、生活保護を受けることができます。もちろん、高校には保護を受けながら通学できます。進学希望なら、バイトをして貯金して、進学資金をつくることもできます」(坪井さん)
生活保護の原則の1つは「世帯単位」だ。親子の世帯なら、親子全員の生活費を1人分ずつ合計したものに、養育の負荷に関する加算を合計した保護費が、世帯主である親に渡されることになる。さらに、ひとり親の場合、ひとり親であることに対する負荷を考慮した加算もある。