ただ叱っても意味がない――お説教より訓練を

 子どもは時期が来れば、叩いたり突き飛ばしたり人のおもちゃを取ったりしてはいけないと悟ります。

 親がたずねれば「悪いこと」と答えるのに、その場の勢いで叩いてしまうのは、知識が体に浸透していないから。知識が習慣になるためには「くり返す」しかないのです。

 知識として得たものをくり返して行動することで、論理的思考をつかさどる前頭前皮質から、反射的な行動をつかさどる皮質下へと伝わるのです。

 子どもは「行動をくり返す」必要があります。

 だから、お説教をしても効果が薄いのです(「何度同じことを言えばわかるの……」)。お説教をするよりも、新しいスキルを訓練させましょう。

望ましい行動の手本を見せるか、ヒントやうながしを与えるのです。これが「足場がけ」と呼ばれる、自力で課題を解決するためのサポートです。ある小学校では話を聞く時間に耳の絵を描かせ、話す時間に口の絵を描かせるという取り組みがされています。「少しの共感」と「多くの訓練」は、必ず役に立ちます。

「チョイスの円」を描いてみる

 子どもが怒ったり感情をあらわにしたときは「感情は選べないけれど、行動は選べる」と理解させるお手伝いをしたいもの。

 インターネットで「Wheel of Choice」と検索してみてください。いくつか画像が見つかると思いますが、そのイラストのように、円をいくつかに分けて行動のイラストを描いてみましょう(ジェーン・ネルセン他著『クラス会議で子どもが変わる』コスモス・ライブラリー参照)。

 円に描くのは、たとえば「相手に『やめて』と言う」「10まで数える」「自分の気持ちを相手に伝える」「その場から立ち去る」「家族会議にかける」「謝る」など。

 子どもが興奮したときに、「どれを使いたい?」と選ばせましょう。