「置き換え」をすると理解できる
このように、悪い行動を「注意する」だけでは不十分なのです。「望ましい行動への置き換え」をする必要があります。
1歳8か月になったとき、娘が私を叩くようになりました。私はとっさに、裏切られた気持ちで手首をつかみ、「叩いちゃだめよ!」と命令しました。すると娘はまた叩きました。
効き目がある叱り方は「人を叩いてはいけないのよ。枕は叩いてもいいわ。でも、人はダメよ」と言うか、娘の腕をなでて「手は優しくさわるためにあるのよ」とさとすこと。
すると娘は言われた通りのことをします。
私の腕をなでてくれたら「まあ!ありがとう!」と言って、「ママはマッサージが大好きなのよ!」と付け足します。
「罰」を与えるのは効果なし!
しつけはもちろん、やっていいことといけないことを子どもに教えるため。
昔は「罰を与える」のが最も効果的だと考えられていました。親が大声を出したり、説教したり、叩いたり、命令したり、脅しをかけたりすると、子どもは親の言う通りにすることでしょう……一時的には。
でも、罰を与えて言うことをきかせると、「強い感情を無理やり抑え込ませる」「非礼なやりとりをする」「力で問題を解決する」といったお手本を見せることになります。
大半の親が子どもに教えたいことは、その逆のはずです。
「衝動をコントロール」し、「他人を尊重」し、「人を傷つけずに問題を解決する」ことを、子どもには学んでほしいものです。
「民主型」の親は、すみやかにきっぱりと、かつ穏やかに、悪い行動が招く結果を提示します。問題が起きたときは、罰を与える機会ではなく、問題解決を学ばせるチャンスと捉えます。
この観点からしつけを行うと、子どもは以下のように育つ傾向があります。
●「コミュニケーション能力」「自制心」「問題解決能力」という、成功する人生に欠かせないスキルを学ぶ。
●「感情」はコントロールできなくても、「行動」はコントロールできることを理解する。
●「権力争い」を避けるようになる。
(「民主型」とは、子どもに厳しい要求をしながらも支援を惜しまない子育てスタイルのこと。民主型を含む4つの子育てスタイルについてさらに詳しく知りたい方は、本連載第7回をお読みください)