東日本大地震が襲った無数の会社のうち、おそらく最大級の傷を負った企業の一つは半導体大手のルネサスエレクトロニクスだ。半導体製品の生産能力(前工程)の半分がフリーズし、主力工場の那珂工場(茨城県ひたちなか市)は被害確認もままならない。非常事態について、同社の赤尾泰社長が被災後に初めてメディアのインタビュー取材に応じた。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義、藤田章夫)

ルネサスエレクトロニクスの赤尾泰社長
Photo by K.Sumitomo

――震災による被害状況を説明してほしい。

 いまだ生産再開のメドがたっていないのが那珂工場だ。まず被災地のために給電、給水が非常に制限されている上、東京電力の変電所の故障も重なり、被害状況の把握がかなり遅れた。先週末から(最先端の)12インチの生産ラインがあるクリーンルーム、昨日(3月24日)にはもう一方の8インチのラインのクリーンルームにも入って状況確認をしている。情報開示ができなかったのはそのためだ。

 私も工場の内部を見た。内部を見たら、工場の階層によって被害が違う。揺れが少なかった1階は、装置のズレもないようで、設備はある程度使える。チェックをした設備で当面しのぐというか、一部区画に移して限定的な製品に絞って生産する。そこまで見えている。製造装置などはこれから詳細を確認するが、全部がグジャグジャになっている訳ではない。被害状況を隠している訳でもない。選択的な生産、選択的な製造工程をへて、生産のための早期復旧はできると思っている。

 一方で、やはり前工程を支える5つの工場への被災が大きい。そのうち高崎工場、甲府工場は設備被害というよりも、計画停電の対象地域のため生産に入れない。24時間電気を流す状態でないと工場はたち上げられないからだ。津軽工場(青森)はある一定レベルの電力供給を頂いて、生産を再開している。また鶴岡工場(山形)も生産再開にこぎつけている

――日産やホンダなど自動車メーカーが必要としているマイコン(マイクロコントローラ:自動車などの電子機器を制御する基幹部品)は安全面の規格が厳しく、代替生産が難しいとされる。またNTTドコモの携帯電話用のシステムLSI(大規模集積回路)も多く受注している。今後、供給先への納品が果たせるのか。

 5月末の納期については、在庫や後工程にさしかかっている製品が7割強ある。課題は残りの3割分と、どういうふうに6月以降の供給をつなげていくかだ。那珂工場は設備も情報系も損傷を受けている。したがって電気を入れればすぐ立ち上がる訳ではない。しかし同工場の製品の半分以上は、グループ内の工場、海外のファウンダリ(半導体生産受託工場)で生産できる。それには既に着手している。6月、7月になって製品がないという状況にしないために復旧をしていく。

(安全基準が厳しい)車載用でも、過去に自動車メーカーに納入した実績のある生産設備をもつファウンドリ工場がある。例えばシンガポール。かつて日立製作所や新日鉄などの合弁会社による8インチの生産ラインがある。現在は米グローバルファウンダリーズ社の工場だが、そこで急遽生産をする交渉を進めている。ラインは変わるけれど、生産のタイミングを優先するなら、実績のあるこれらの工場で作りますと自動車メーカーに説明している。自動車向けマイコンの納入実績がない工場でも、製造工程を詳細に説明して、納入させて下さいと話している。

 ルネサスはマイコンでシェアが高い。しかし弊社の自動車用のマイコンの全生産量のうち、那珂工場は4分の1。残り75%は川尻工場(熊本)や西条工場(愛媛)で生産しており、代替可能なものもある。NTTドコモ向けの製品も、すでに台湾のTSMC社に委託をしており代替生産できる。すべて駄目になっていると言っている人がいるみたいだが、それは誤りだ。