まず、われわれを取り巻く情報量そのものが、飛躍的に増大した。米調査会社IDCによれば、1年間に生み出されるデジタルデータ量は、2000年の62億ギガバイトから、13年は4.4兆ギガバイトと約700倍に膨れ上がった。今後も増え続け、20年には、44兆ギガバイトまで膨らむと推定されている。

 さらに、LINEやツイッターをはじめとする、SNSの新たなコミュニケーション手段が登場したことも、集中力の持続時間の低下に拍車を掛けた。

 何かに取り掛かっている際に、SNSの通知音に呼ばれて作業を中断するのは、日常ではありふれた光景になった。総務省によれば、SNS利用者の平日の平均利用時間は70分を超えたという。

 多様な情報の処理に追われる現代のビジネスパーソンは、同時に複数の仕事をこなすマルチタスクが当たり前。例えばビジネスパーソンはメールチェックを平均で1時間に30回もしているそうだ。

 ポジティブに捉えれば、集中力の持続時間の低下は、環境に適応して、高度な情報処理力を身に付けた結果といえるかもしれない。ただ、マルチタスクは脳の疲労につながり、仕事の生産性を落としているというデータも出始めた。

 マルチタスクに追われるのではなく、目の前の仕事に集中して一つ一つこなしていくことで、自分の力を最大限に発揮する。こうした新しい観点で、注目が集まっている手法がマインドフルネスだ。

 マインドフルネスとは「今この瞬間に注意を向けて、自己認識を深めるための瞑想法」(荻野氏)。ざっくり言うと、瞑想から宗教色を排除して、“いいとこ取り”したようなものだ。米グーグルが07年に導入したことがきっかけとなり、米フェイスブックや米インテルなども追随。心を落ち着かせ、仕事のパフォーマンスを高める手法として、米国企業が次々と導入するようになった。

 マインドフルネスが米国で受け入れられたのは、瞑想の効果について、脳科学の視点による裏付けを添えて説明されたからだ。

 例えば、1万時間を超える瞑想経験者の脳を解析し、島皮質と前頭前野という領域の厚みが増していたというデータがある。