東京電力の計画停電は、工場や病院、スーパーなどあらゆる業種を混乱に陥れた。だがこの騒動は今夏で収まらない。すでに夏は約1000万キロワットの供給力不足が見えている。このままでは次の冬、また次の夏と続く。1~2年ですむ話ではない。家庭だけではなく産業界が知恵を結集して挑むしかない課題なのだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男、小島健志、柴田むつみ)

「いちばん困るのは計画停電が計画どおりではないことだ」──。

 東京電力管内に製造工場を持つ大手化粧品メーカーの幹部は憤る。同社では計画停電に合わせて生産シフトを組み直し、工場で働く従業員の勤務シフトも調整している。

 しかし、実際には“計画”は頻繁に変更され、“無計画停電”と揶揄されても仕方ない状況だ。停電が予定されていても前日の正午頃に中止の発表をする場合が多い。

 工場では従業員がいなければ製造ラインは動かせない。急きょ、停電が中止になっても従業員の確保ができずラインを動かすことができないのだ。そうした状況では、メーカーはただひたすら歯がゆい思いをするほかない。1日単位での生産計画が立たなければ、事業計画など立つはずもない。

 小売り業界にとっても同じだ。日本スーパーマーケット協会には会員のスーパーから「正確な停電時間を知りたい」という問い合わせが多く寄せられている。「計画停電は未確定部分が多い。直前に計画停電がなくなっても、パートを確保できないから店が開けられない」(首都圏のスーパー)のだ。

 さらに、スーパー特有の混乱も生じている。複数店舗を展開するスーパーでは、商品の受発注システムを導入しているところが多いが、停電で店頭のシステム端末が落ちてしまい、商品が発注どおりに店舗に届かないといった混乱も起こっている。それはそのまま機会ロスとなってしまうため、すべての文書を手書きで修正するなど、膨大な作業負担が発生しているという。

 自家発電設備を持つ事業者も多いが、だからといって計画停電の影響を受けないわけではない。自家発電では、普段使用する量の電力はとうてい確保できないからだ。

「自家発電といったって製造ラインを通常どおりに動かせるわけではない。燃料代もかかる」と大手精密部品メーカーは頭を抱える。