断絶の時代
ダイヤモンド社刊 2400円(税別)

 「選択肢を前にした若者が答えるべき問題は、正確には、何をしたらよいかではなく、自分を使って何をしたいかである。多元社会は一人ひとりの人間に対し、自分は何か、何をしたらよいか、自分を使って何をしたいかを問うことを求める。この問いは就職上の選択の問題に見えながら、実は自らの実存にかかわる問題である」(『断絶の時代』)

 自分が得意とするものが何かはまだわからない。それどころか、自分の「値打ちがある」とするものが何かさえ、まだわからない。

 ほとんどの人が親の後を継いで農民になる以外になかった時代は、ついこの前のことである。しかし、いまや選択肢は無数にある。

 だから就職に悩む。しばしフリーターともなる。その間に、せっかく身に付けた知識が陳腐化するという悲劇も起こる。

 ドラッカーによれば、17世紀にデカルトが精神の実存を無視して以来、西洋では、いかにして人間の実存は可能かではなく、いかにして社会の存在は可能かが問われてきた。こうしてこの2世紀の間、世の関心は社会に向けられてきた。

 「今日ふたたびわれわれは、昔からの問いである一人ひとりの人間の意味、目的、自由という根源的な問題に直面している。世界中の若者に見られる疎外の問題が、この問いに答えるべきことを迫っている。組織社会が、選択の機会を与えることによって、一人ひとりの人間に意思決定を迫る。自由の代価として責任を求める」(『断絶の時代』)