1420億円という増益分(通期では約2000億円)を、そのまま損益計算書に反映させると、年間の営業利益は軽く1兆円を突破する計算になる。

 本来は喜ぶべきことだが、1兆円の大台突破は同社にとって、ともすると、永田町を中心としたもうけ過ぎ批判→通信料金の引き下げ圧力という、最悪のパターンになりかねない。

 そうした読み筋からなのか、ドコモは17年度以降に見込まれる負担費用(850億円)を前倒しで計上することで、増益額を570億円にまで抑え、利益をあえて低く見せるかのような対応をしているのだ。

 後年度負担費用として、前倒しで計上したもののうち、「残価償却」については、定率法によって従来償却し切れていなかった部分を、一括償却するという一定の必然性がある。

 ただ、残り二つの「設備の前倒し除却」と、月々サポートと呼ぶ料金割引の費用一括計上(負担軽減)については、より利益を大きく見せたい企業であれば、16年度にわざわざ計上しない類いの費用だろう。

稼ぎの使い道は
内部留保と株主への還元

 業績が好調なうちに先手を打っただけで、営業利益を何とか抑えたいのであれば、減価償却をあえて定額法に変えたりしないはずという見方もできるが、そもそも定額法への変更は、ドコモの独自施策ではない。

 あくまでNTTグループ全体として、定額法を採用する国際会計基準(IFRS)に18年度から移行することが、大方針として決まっている中での話だ。

 そうした経緯を踏まえると、グループの稼ぎ頭でもあるドコモとしては、思わぬ利益の上振れに対応を迫られたように見える。

 契約総数7000万件という顧客基盤は、20%の営業利益率と14%の純利益率という、隠し切れないほどの圧倒的な収益力を生み出しているが、その稼ぎの主な行き先は内部留保と株主還元だ。

 16年末時点の内部留保は4.7兆円に上り、配当総額と自社株買いを合わせた株主への「総還元性向」は15年度まで、100%を超えている(図(3))。

 ドコモは、割安な料金プランの導入などで、16年度は1500億円規模の顧客還元策を実施とうたっているが、その2倍前後の金額を株主還元に使っている現実は、株を持っていない契約者たちにはどう映るか。

 より直接的な利害関係者である株主ばかりに目を向け、長期の契約者などに対する料金引き下げは二の次になっているのではないか、という政官発の批判がいまだにくすぶっているのは、ドコモのそうした姿勢も少なからず影響しているはずだ。

 政官の旗振りによって、キャリアから通信網を借りて格安な通信サービスを提供する格安スマホ勢が台頭し始め(図(4))、競争のルールは徐々に変化している。

 さまざまな外圧に対し、守りの姿勢が目立つ中、ドコモが今春発表する中期経営計画に、堂々たる王者としての「風格」を垣間見ることは果たしてできるだろうか。