私は、日本で試験に合格して外交官になり、最後には大使にもなった。しかし、韓国に生まれていたなら、その過酷な競争社会のプレッシャーに勝てなかったかもしれない。家族全員で、子どものために大変な犠牲を払っても報われない現実。しかし、一部のエリートはそうした競争を回避していい思いをしているとの羨望。そうした不満が鬱積しているのが韓国社会である。

 そうした現実の中、朴大統領は経済民主化を旗印に、格差是正を公約して大統領に当選した。しかし、そのスローガンはいつの間にか消え、密室の中で大統領が正体不明で胡散臭い崔容疑者に操られて国政を危うくし、政界と財閥が癒着して一部の人だけが良い思いをしていると、失望感が広がっていた。そのため、崔容疑者の事件がなくても次の大統領選挙では野党が有利と言われてきた。

 韓国は隣国であり、北朝鮮という脅威に対抗するためには否が応でも付き合っていかなければならない国である。そうした国とどう向き合うべきか考える前提として韓国社会を見てみたい。

人生を決める大学受験
常軌を逸した教育費

 韓国ではどの大学を卒業するかによって「人生が決まる」と言われており、大学進学率は短大・専門学校を含めると80%台(日本は約50%)という超高学歴社会である。

 韓国で日本の大学入試センター試験にあたる「大学修学能力試験」が行われる日には、パトカーがサイレンを鳴らし遅刻しそうな受験生を試験場まで連れていく、ヒアリング試験の行われている約30分間は飛行機の離着陸まで禁止される、という日本では考えられないことが起きている。大学入試は、各大学でも内申書を参考とし、面接、小論文の試験を行っているが、「大学修学能力試験」の成績の占める割合は高く、高校3年間の努力が一日で決まるのである。

 しかもその努力たるや。高校生は、朝、2つの弁当を持って登校する。放課後、夜の10時まで図書館に籠って自習し、その後は「学院(ハグォン)」で勉強を続ける。まさに人生を懸けた戦いである。

 しかしその戦いは受験生ばかりではない。韓国では、受験戦争の弊害を和らげるために1974年に「高校平準化」を導入し、中学、高校受験をなくして、抽選で地域の高校に振り分ける方式を導入した。しかし、規制の強化で受験戦争の弊害を取り除くことはできない。代わりに課外授業が活発となり、家庭に収入に占める教育費の割合は一層高まった。韓国では家庭教師に月100万ウォン、150万ウォンを払っても1科目か2科目であり、有名教師ならもっと高くつく。学院(ハグォン)という塾でも週2〜3回の進学塾的なところで月30〜50万ウォンくらいになる。