ハイチ、ニュージランド地震で見せた
オープンソース・ソフトウェア「Ushahidi」のポテンシャル
このプロジェクトの技術的な中核を占め、かつ、「シンボル」となったソフトウェアがある。本連載第1回でも登場した「Ushahidi」(スワヒリ語で「証言」という意)と呼ばれるオープンソース・ソフトウェアだ。ケニアの大統領選挙の結果に対し、対立勢力が反発し、多くの死者が出た。その状況を世界で共有するために始まったのが、この「Ushahidi」というプロジェクトであり、ソフトウェアだった。
「Ushahidi」がユニークだったのは、地理情報をインターフェースに使っていること、すなわち情報の集約、選別、ナビゲーションの中核に地理情報を据えるコンセプトだけではない。有志のコミュニティとの連動、その他のウェブサイトや端末との統合を前提とした設計がなされ、次世代のオープンソース・ソフトウェアとして注目されていく。
2008年に立ち上がったこのソフトウェアと有志のコミュニティは、記憶に新しいニュージランド地震やハイチ、チリの大震災でも奇跡的な活躍を見せた。日本を襲った震災と同様に被災者がメッセージを発し、それがインターネットを通じて共有され、その情報を基に救援隊が駆けつけた。ハイチでは、メッセージは基本的に現地の言葉で交わされたが、合衆国のハイチ系アメリカ人を通じて翻訳され、救助の現場で使われた。
設計図をすべて公開するという思想で作られたこのソフトウェアは、柔軟なカスタマイズが可能なことに加え、各種のウェブアプリケーションと接続可能だった。そしてさらに、開発者と支援者のグローバルなコミュニティを有していた。
この中に、たまたま「sinsai.info」を立ち上げたチームのメンバーがいたのだ。