もちろん、被災状況の投稿などはtwitterなどのソーシャルメディアでも拡散・増幅することができた。しかし、錯綜する情報の中から、投稿者が現時点でどういう状態にあるのか、デマではないのか、いま何が必要なのか、ということを見極めるのは難しかった。

 誰もが膨大な情報にアクセスできるからこそ、情報を一元的に管理し、かつ、必要な情報のみを選別するインターフェースが求められていたのだ。「sinsai.info」はtwitterなどの各種メディアと接続しながら、地図を介して情報を整理する、という点でユニークな試みだった。
 

震災後わずか4時間で立ち上がった
「災害情報集約プラットフォーム」

 3月11日18時30分。震災からわずか4時間足らずのこのとき、災害情報集約サイトの実験版が立ち上がる。

 さらにその3時間25分後、「宮城県南三陸町志津川 / 介護老人保健施設ハイム・メアーズに多数の生存者」、そして「私の母とおじさんが津波で逃げ遅れてとりのこされています!周辺のかた救助のほうよろしくお願いいたします。明かりもなく近くで火災もおきていてすごく怯えています!」という投稿を皮切りに投稿数は増加していく。

 翌日の12日、サイトの母体を個人サーバーからプロジェクトのリーダーとなる関治之が代表を務めるGeorepublic Japan 社のインフラに移行し、本格的なサイト管理が始まる。「sinsai.info」のドメインでの運用が始まったのはこのときからだ。

 同時に、サイトを運営するボランティアが集い始める。13日の時点ですでに30名近くのエンジニアが集まった。「自分にやれることはないか」と焦りを抱えていたエンジニアが、こぞってこのプロジェクトに参画したのだ。

 アクセス数は急速に増加していく。あっという間に、サーバーを強化せねばならないところまで追い込まれた。だが彼らは、本来であれば時間をかけて計画的に行うサーバーの移行作業を、たった十数時間で完了させた。

 それだけではない。移行に伴うエラーが発生する。文字の表示が上手くいかない。すべての問題を走りながら解決していく。移行終了後しばらくして、やっと自己紹介をするタイミングが訪れたという。