これまでも静かにシェアを拡げてきたソーシャルメディア。だが震災という危機の中で、その可能性は突如として浮き彫りになっている。前回の記事では、その様子をアメリカで活躍する社会起業家の目線から述べた。
今回からは視点を変えて、震災の中で生まれた日本人の自発的な動きにフォーカスをしていく。まずは、震災後いち早く稼動し、現在も災害情報を編集・共有し続ける「sinsai.info」が演じたドラマとその可能性の検討から始めよう。
南相馬市で人を救った「sinsai.info」
――クラウド型技術が起こした奇跡
「南相馬市の赤坂病院、雲雀ヶ丘病院の患者、職員ともに避難できず苦しんでいます。マスコミや関係期間を通じ救出を呼びかけてください。よろしくお願いします。食料もなく薬もあと数日しかありません」 雲雀ヶ丘病院
福島県南相馬市。津波よって壊滅的な被害を受けた町だ。町の一角に立つ病院は何とか持ちこたえたものの、病院の周囲の交通網は遮断され、食料も水も尽きかけていた。クラウド型の情報集約サイトに救援を求める投稿が寄せられたのは、まさにそんなタイミングだった。
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そしてこの救助要請は、ソーシャルメディアを介して患者の救援につながっていく。
「知人から聞き、今社内で関係各所に電話して救出してもらうように連絡します。できることがあれば言ってください」
「先程自衛隊福島本部 福島地区援護センターに連絡しました。担当は佐藤さん。 救出してくれると言っていただきました。病院なのでできるだけ早く対応するはずです。(中略)食料と薬がないことは伝えました。できることがあれば言って下さい。先生や看護関係者の皆さんも大変でしょうがなんとか、がんばってください」
こうしたやりとりの結果、患者達は無事に都内の病院に避難することができたという。このやりとりは、災害情報を集約し、地図を介して共有するウェブサイト、「sinsai.info」の中で起こった。
被災者と支援者のためのメディア誕生
――ツイッターにはない「情報の集約」という強み
震災以降、このウェブサイトでは、救援情報から道路状況、ライフラインの復旧に至るまでの幅広い投稿が1万件以上集まり、累計数十万人もの人がこのサイトを活用した。この災害情報集約サイトは、「どこで何が起こっているのか」を地図上に可視化する被災者と支援者のための新しいメディアだ。