日本では選択する力を育む教育が必要

久賀谷 学習のメカニズムがわかってくるなかで、学習内容を個人に合わせてカスタマイズする「アダプティブ・ラーニング」の流れがありますよね。斉藤さんと私は、よく言えば自分らしく、悪く言えば自分勝手に生きてきたわけですが(笑)、そういう子どもたちからすれば、アダプティブ・ラーニングは歓迎されるのではないかと思います。

斉藤 そう思いますね。一方で、いまの中高生を見ていて思うのは、「自分で選ぶ」ということに慣れていないなということですね。J PREP斉藤塾では、勉強時間が長く進度が早いコースと、無理しないで部活動などと両立しながら通えるコースの2コースを設けています。これだけ単純な選択肢であっても、生徒からは「自分で選べません。」という声が挙がることがありますね。

「25分単位」で考えると、子どもの集中力は持続する

久賀谷 そうなんですね。その点、アメリカの子どもたちとはまったく違いますよね。ちなみに今後、人工知能が発達したりすることで、アダプティブ・ラーニングがより進化することはあり得ますか?

斉藤 ありえますね。すでにそうした研究開発は進められています。単語を効率的に暗記できるよう、覚えるべき単語をレコメンドしてくれるとか、生徒一人ひとりの弱点を分析して、それを克服するための学習メニューを提供してくれたりといったことは、近い将来に、普及してくると思います。

久賀谷 そうなると、生徒はますます「自分で選ぶ」ことをしなくなりそうですね。

斉藤 まさにそこが重要な点です。人工知能の教育への応用については、効率的な学習の補助的なツールに過ぎないというのが私の立場です。つまり、「何を学ぶか」などの最終的な決定は人間がするしかないわけですね。

久賀谷 アダプティブ・ラーニングにしろ人工知能にしろ、学習をめぐる外的環境がどれだけ整備されていっても、それだけでは解決しない問題があると?

斉藤 ええ。「自分が何を学びたいのか」を自ら理解し、それを選べる子どもを育んでいく努力は欠かせません。「選ぶ力」があるかどうかで、その後の成長は大きく違ってきますからね。

「25分単位」で考えると、子どもの集中力は持続する