3メガバンクグループの一角である三井住友フィナンシャルグループと、大手銀行グループのりそなホールディングスが地方銀行の再編劇で主役に躍り出た。2社の傘下にある関西の地銀3行の経営統合交渉が最終段階にあることが判明したからだ。このことは二つの意味で新時代の到来を示唆している。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)
「大阪地域はどうするのか。東京の西エリアは、埼玉はどうするのか。りそなが広域の地方銀行グループを標榜するのならば、それに見合った戦略を立ててほしい。それについて議論したい」
銀行の監督官庁である金融庁の幹部が、今から10年以上も前にりそなホールディングス(HD)の経営陣に放った言葉だ。今、その問いに対する答えがようやくお目見えしたのかもしれない。2月20日、三井住友フィナンシャルグループ(FG)とりそなHDが、それぞれの傘下にある関西地銀3行の経営統合を検討していることが明らかになったからだ。
再編対象は、三井住友FG傘下の関西アーバン銀行(大阪府)とみなと銀行(兵庫県)、そして、りそなHD傘下の近畿大阪銀行だ。統合が実現すれば、3行の単純合算で総資産11.6兆円超(2016年9月期)という関西最大の地銀グループとなる。
三井住友FGとりそなHDが共同持ち株会社を設立し、その傘下に3行を置く案が検討されている。ただ、2社の関係者によれば、「それはあくまで途中段階の姿。最終的な構図としては、三井住友が(傘下2行を)売って、りそながそれを買うことになる」という。
背景にあるのは、「大き過ぎてつぶせない」巨大銀行を排除しようという国際金融規制だ。世界中の巨大銀行グループが資産を切り売りしての規模縮小を迫られており、三井住友FGも事情は同じ。傘下地銀を切り離すことによって総資産を圧縮し、海外戦略を加速させたい考えだ。
一方、メガバンクでも地銀でもないビジネスモデルを模索してきたりそなHDは、国内の中小企業金融に特化する戦略を掲げており、2社の利害が一致したかたちだ。
今回の案件は、銀行業界の再編において新時代の到来を示唆している。長年「地銀再編の台風の目」と目されながら、“眠れる獅子”のままだったりそなHDが、ついに再編劇の主役に躍り出たからだ。
歴史を振り返ると、冒頭のように金融庁幹部がりそなHDの経営陣に問い掛けた当時、りそなHDは経営難から約2兆円の公的資金注入を受けて実質国有化。東日本旅客鉄道(JR東日本)の副社長を務めた故・細谷英二氏を会長に招聘し、再建中という状況だった。
その進捗状況を追っていた当時の金融庁幹部の念頭には、かつてりそなHDが掲げた、地銀連合という地域密着型かつ広域な営業エリアを持つ「スーパー・リージョナル・バンク」構想があった。りそなHDはその「最終形」として、地盤を持つ埼玉県・大阪府・奈良県に「地域名+りそな」の名を冠する銀行を設立し、さらに他の地銀をも傘下に収める未来図を描いていたのだ。