100年後の今日のグローバル化は、一方で米国の国内外に貧富の格差を拡大させています。他方で米・NATO連合軍が中東で空爆を続け、事実上の軍事占領を進めています。数十万人の難民が祖国を追われ、その民衆の怨嗟が、反米欧へのテロを生み出します。そのテロの真因を、シカゴ大学テロ研究班が80年以来の2500件以上の膨大なデータを基に明らかにしました。

 21世紀グローバル化の進展下、ソ連崩壊後にアメリカは、軍の民営化を進めて戦争請負会社をつくり、デモクラシーを湾岸やバルカン、中東アフリカに広める戦争を繰り出します。その結果がテロのグローバルな拡延なのです。その意味で「文明の衝突」論は、テロの表層部しか見ていない西側中心主義史観です。

──世界の政治経済の中心は、アジアに移りつつあり、実質的な統合に向かっていると述べておられます。それはEU(欧州連合)のような法的な枠組みではなく、デファクトとしての統合だと分析しておられますが。どういうことでしょうか。

 ここでもキーワードは、情報革命です。情報革命下で、距離が急速に短縮され、モノとカネ、ヒトと情報と技術が国境を超えて移動します。一国中心の生産体制から、ネットワーク分業型の多国間生産体制が広がります。アジアの場合、日本の開発援助や直接投資、技術支援が、韓国や台湾、中国やASEAN諸国の社会経済的な発展基盤をつくり上げます。その基盤の上に部品など中間財貿易を軸にサプライチェーンがつくられ、アジア経済一体化が進行するのです。

 国家主権を法制度的に削減し続けた、デユーレ(法的)の統合EUと違って、アジアの場合、国家主権を残したまま国境の壁を低くするデファクト(事実上)の統合が、アジア型生産ネットを軸に、ASEAN共同体という小国連合に牽引され進展しているのです。

 加えて三十数億の人口を擁するアジアは「世界の工場」になります。分厚い中間層が形成され、「世界の市場」が生まれ「世界の銀行」へと変容し始めます。人口オーナスが人口ボーナスに化し、世界経済の中心へと躍り出るのです。

 さらにアジアの山河や海洋、砂漠で分断された広大な空間がつくる経済的潜在性です。情報革命下で開発技術や建設機器が進化し、巨大市場と経済一体化を背景に、インフラ整備強化の需要をつくります。空間オーナスが空間ボーナスへ変換します。中国が提唱し、EUを含む58ヵ国からなるアジアインフラ投資銀行は、その担い手になります。

 世界経済の中心が、アジアの事実上の統合を基盤に、米欧世界からアジア世界へと移り始めているのです。