退職金制度は「人事・報酬制度」として
とらえるべきである

 給与の約10%もかかる退職金制度ですから、改革するならうまく活用したいものです。この場合、まず退職金・企業年金制度を、福利厚生制度ではなく、「人事制度の一部」であると位置づけ、退職金の増減を「報酬制度」の一環であると再定義して決めるべきでしょう。

 会社の人事制度のサイクルを大きくいえば「評価→処遇→報酬」の流れです。公平な人事評価を行い、評価に従って適切な人事処遇を行い、処遇に見合った報酬を支払う…こうしたことをしっかり行うことで、社員のがんばりに応え、社員の会社への忠誠心も高めることができます。

 評価、処遇、報酬のいずれもバランスを欠けば社員の不満になりますし、そのサイクルが連環していかなければこれまた不満の温床となります。

 退職金や企業年金は、その給付額や掛金額の算定基礎を処遇にもとづき決定されます。給与と同様、定期的にお金を払う(積み立てる)わけですから、これはそのときの評価と連動させた「報酬制度」として設計、考える必要があるわけです。

 そして人事報酬制度だと理解すれば、お金に見合った効果が生まれるような仕組みを作っていくことが必要になります。

今回の結論
退職金・企業年金制度は、「長い間働いてくれて、お疲れ様」という福利厚生ではなく、働いていた成果と連動する「人事・報酬制度」としてとらえるべきである。

次回(3/22更新予定)は、退職金・企業年金を5分で理解する「4分類」を紹介します。

社長、退職金制度は<br />福利厚生制度ではありません!

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
1995年株式会社企業年金研究所入社後、FP総研を経て独立。ファイナンシャル・プランナー(2級FP技能士、AFP)、1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)、消費生活アドバイザー。
若いうちから老後に備える重要性を訴え、投資教育、金銭教育、企業年金知識、公的年金知識の啓発について執筆・講演を中心に活動を行っている。
企業年コンサルタントとしても活動しており、特に確定拠出年金については、業界団体である企業年金連合会で首席調査役として企業担当者の研修担当や企業向けガイドブックの執筆を行い、さらに厚生労働省社会保障審議会確定拠出年金の運用に関する専門委員会委員も務める(2017年2月から)。「人事労務」等専門記事、マネー誌でも執筆ほか、日経新聞電子版で『人生を変えるマネーハック』を連載中。
著者ウェブ  http://financialwisdom.jp  twitter: @yam_syun