李克強首相(中央)が政府活動報告において、習近平国家主席を「核心」と位置付けたのも、成長率目標と並んで話題になった Photo:REUTERS/アフロ

中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が3月5日に始まり、今年の実質GDP成長率目標が6.5%前後に引き下げられた。「安定成長」を全面的に掲げたものだが、不動産バブル崩壊懸念やトランプリスクなど先行きは不透明だ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

 中国の全国人民代表大会(全人代)が3月5日に開幕した。李克強首相は「政府活動報告」で、今年の実質GDP(国内総生産)成長率目標を「6.5%前後」とした。

 習近平国家主席(中国共産党総書記)が掲げる2020年までの、対10年比での「所得倍増計画」を達成できる水準ではあるものの、昨年の目標「6.5~7%」より引き下げた。言うまでもなく、図のように、中国の実質GDP成長率が鈍化していることが背景にある。

 その要因は、構造改革が進まず、過剰設備、過剰在庫、過剰債務が成長の重荷となっていることにある。長年、構造改革を課題に挙げ続けているが、進捗していない。

「中国共産党は何より経済の安定を重視している。昨年12月の中央経済工作会議においても、“穏中急進(安定を保ちつつ経済成長を促す)”を繰り返し使っていた」(西濱徹・第一生命経済研究所主席エコノミスト)

 今年は、中国では5年に1度の共産党大会があり、最高指導部の入れ替えが行われる。それだけに、習主席としては、経済の失速を避けて、次の指導体制づくりに向かいたいところだ。

 足元では中国経済の失速懸念は薄れている。米国などがけん引し、循環的要因で世界景気は回復局面にある。中国の輸出が拡大し、製造業PMI(購買担当者指数)は2月まで7カ月連続で50を超え堅調さを見せている。

 李首相の言葉に従えば、中国は、16年は鉄鋼や石炭関連で目標以上の生産能力削減を進めたとされる。それにより、市況が底打ちするとともに、中国経済が上向いたことで、新興国市場にもプラス効果が出てきた。

 もっとも、好循環が続くかどうかは不透明だ。(1)トランプシフト、(2)金融システム不安、(3)米国の利上げや欧州の選挙などに起因する市場の変調といった三つのリスクがあるためだ。