ケース3
親がアパート・マンションなどの
賃貸物件を持っている

 賃貸物件を持つ目的が、相続時の節税対策であることはよくあります。なぜなら更地で土地を持っているよりもアパートなどを建てておいた方が課税の評価額が低くでき、節税になるからです。

 ところが、せっかくこうした手を打っていても、相続手続きに時間がかかると、「相続税軽減の特例」が受けられず、目論んだとおりに節税できないことがあります。

 相続税軽減の特例には、(1)配偶者の税額軽減の特例(配偶者の相続財産には一定額まで税金がかからない)、(2)小規模宅地の減額の特例(土地の評価額の50から80パーセントが減額される)があります。

 これらの特例を受けるには、原則として相続発生を知った日の翌日から「10か月までに」相続手続きをする必要があります。親が賃貸物件を持っている場合は、この特例を活用するためにも、遺言書が不可欠です。

ケース4
親が、親族以外の人にお世話になっている

 あなたが夫婦で親と同居している場合、親が要介護状態になったとき、下の世話をはじめとして介護の世話をするのは、息子のあなたではなく、あなたの奥さんになる可能性が高くなります。高齢者のなかには「嫁が『しゅうと』や『しゅうとめ』の世話をするのは当たり前」と考えている人はまだ多いようです。しかし、あなたの奥さんが「しゅうと」や「しゅうとめ」の介護で自分の時間を奪われ、身も心もすり減らして尽くすことに対して、何らかの見返りを期待する気持ちを持ってもおかしくはありません。

 このような場合、親は「いずれ息子に財産を相続するのだから、それで問題ない」と思いがちです。ところが、仮に息子(つまり、あなた)が、不慮の事故などで親よりも先に亡くなると、あなたの奥さんはあなたの親の法定相続人にはなれないので、親の財産を一切奥さんに相続させることができません。日頃から奥さんが親の面倒を一生懸命見てくれているなら、こういうことも考慮して、遺言書で確実に奥さんにも報いてもらうことが望ましいでしょう。