ケース7
親に兄弟姉妹が多い

 あなたの親が大正生まれや昭和一桁生まれだとすると、親の兄弟姉妹が7、8人いる場合も多いでしょう。このような場合、親の兄弟姉妹が亡くなった後、相続トラブルが起きやすくなり、あなたにも飛び火する可能性があります。

 50代のある男性には、兄弟が9人いる86歳の父がいます。9人兄弟のうちの82歳の叔父は重い認知症の80歳の妻を自宅で介護していました。ところが叔父は、ある日、持病の心臓病が悪化し、心臓発作で突然亡くなってしまいました。叔父以外に介護する人のいなかった叔父の妻は、その数日後に自宅で亡くなりました。

 亡くなった二人に遺言書はなく、叔父の両親はすでに亡くなっており、二人に子どもがなかったため、相続人は叔父の複数の兄弟に加えて数人の甥と姪(「代襲相続人」と言います)になりました。叔父の何人かの兄弟がすでに亡くなっていたからです。

 男性の父(叔父の兄)はすでに足腰が弱っており、男性が父の代わりに遺産分割協議の打ち合わせに参加せざるを得なくなりました。父の兄弟たちとは何年も顔を合わせていないばかりか、男性のいとこにあたる叔父の甥姪たちともほとんど交流がありません。こうした希薄な人間関係の人たちと、いきなり遺産分割という生臭い揉めごと話をせざるを得なくなり、しばらく憂鬱な日々が続きました。

 このように、あなたの親に兄弟姉妹が多いと相続トラブルに巻き込まれる可能性があります。

 以上の7つのケース以外にも、特に子どもがいない場合は、遺言書がないと困ることが多いのです。しかし、本連載では老親を持つ現役世代の子どもを対象読者としているので、あえて触れていません。