中国の貿易政策が大きな岐路に立っている。安い人件費をベースに“世界の工場”として目覚ましい経済発展を遂げてきたが、その貿易政策を支えてきたのが「特恵関税」だ。ところがここにきて、日本では中国を特恵関税の適用対象から除外しようとする動きが始まっており、アメリカでもトランプ政権が、中国に対して貿易の不均衡の是正を求める姿勢を強く打ち出している。(取材・文/清談社 光浦晋三)
トランプもかみついた
中国との不均衡貿易
今年2月、アメリカはトランプ政権下となって初となる、中国製品に対する制裁関税の適用を決定した。直接的には「道路の舗装などに使う製品が、中国政府による補助金によって不当に安く売られ、アメリカの企業が損害を受けている」という理由だが、その背景に対中貿易の不均衡を是正しようという思惑があるのは間違いない。
実際、トランプ大統領は選挙期間中から中国に関して、「関税を45%に引き上げる」「大統領就任初日に為替操作国に認定する」と公言しており、いよいよ本腰を入れはじめたというわけだ。
「アメリカのプリツカー米商務長官は、中国を世界貿易機関(WTO)協定上の「市場経済国」の認定を見送る考えを示しており、EUや日本も足並みを揃える見込みです。そうなれば中国に対して反ダンピング関税などの措置もとりやすくなり、貿易に関する“対中包囲網”が強まることになるでしょう」(中国事情に詳しいジャーナリストの奥窪優木氏)
また日本の財務省も昨年11月24日、新興国への特恵関税制度の基準を見直し、中国などを対象から除外する方針を示している。「すでに経済発展し、輸出競争力も十分であり、援助の必要性がなくなった」という判断で、19年度までの実施を目指すという。
「この財務省の発表は、トランプが正式に大統領に就任する前に安倍晋三首相と会談した1週間後の発表でした。タイミングを考えても、日米が連携して中国を経済面で締め上げるという意図があったようです」(同)