「コンテンツ」とは?
このコンテンツの概念をご理解いただくために、再度説明を加えます。世の中を見渡すと、様々な商品が売られています。スーパーに行けば野菜、果物、パン、おにぎりが並んでいます。家電量販店にはテレビ、冷蔵庫、パソコン、携帯電話が並んでいます。
それ以外にも多くの店舗で、多くの商品が売られていて、ぼくら消費者も日々多くの商品を買っています。みなさんも、つい最近も何か商品を買ったでしょう。
あなたはなぜその商品を買ったのでしょうか? 言い方を換えると、何を求めてその商品を買ったのでしょうか?
家電商品を考えるとわかりやすいですが、消費者が家電を買う時、求めているのはその家電の物質ではありませんね。掃除機を買うのは、その掃除機を形作っている「プラスチック」を買っているわけではありません。みなさんが買っているのは、掃除機が果たす「役割」ですね。
つまり、「掃除機を使ってできること」があり、みなさんはその「できること」を買っているわけです。すべての商品は同じように「役割」「それを使ってできること」があります。そして、その役割を通じて、商品はぼくらに何かしらの変化をもたらしてくれます。
掃除機を持っていたら、部屋をきれいにすることができます。電子レンジを持っていたら、食べ物を温められます。スマートフォンを持っていたら、いつでもどこでも、メールやインターネットができ、ゲームも楽しめるようになります。スマートフォンという機械がそれらを提供してくれているわけです。
それがここでいう「コンテンツ」です。
売るものは形がある「モノ」でも構いません。コンテンツ(お客さんがほしい!と思う要素)がモノに内蔵されていたら、モノを売っても構わないのです。
iPhoneはモノですね。ですが、iPhoneを持つことは驚きの体験でした。iPhoneは、お客さんが「これやりたい! こんなものがほしい!」という“コンテンツ”を提供していたのです。
しかし、これを「モノ(機能)」として捉えてしまうと、完全に方向性を見失います。iPhoneが発売された時、日本のメーカーで、同じようなモノが生産できないか検討されたそうです。この時、そのプロジェクトリーダーを担当していた方のお話を聞いたことがあります。
「上がってくる企画書が、みんなスペック重視で絶望した」
要は、「うちなら、モノ(機能)としてiPhoneよりいい商品が作れます。より高いスペックのモノを作れます」というコメントしか上がってこなかったということなのです。
iPhone自体は物質的なモノですが、みんながiPhoneを持っているのは、その機能をほしいからではありません。iPhoneが提供するコンテンツをほしいからなのです。