若手社員の離職率が高い会社は、人事制度に問題がある場合が多いと、『人事の超プロが明かす評価基準』の著者で、人事コンサルタントの西尾太氏は分析する。辞めていく若者の多くは、一様に自分の将来に対する不安を口にするという。

「先が見えない不安」で
若者社員が次々辞めていった

 私が人事評価に「人材育成」という視点が必要だと考えるようになったのは、カルチュア・コンビエンス・クラブ(CCC)で人事担当を務めていたころでした。

 現在のCCCは、TSUTAYA事業をはじめとするエンターテインメント事業、Tポイントを中心としたデータベース・マーケティング事業で広く知られる会社に成長していますが、1998年から2000年代前半にかけては、まだ人事制度も未整備のベンチャー企業でした。

 当時、私たち人事部門が頭を悩ませていたのは、若い社員が次々に辞めていくことでした。退職の理由はさまざまでしたが、かなりの割合で共通していたのは「先が見えない」という言葉でした。

「この会社や仕事内容は好きですが、このままここにいても成長できるかどうかわかりません」

 みんな口をそろえてそう語るのです。会社の成長に対する不安もあったと思いますが、それ以上に、自分の将来への不安が大きかったのでしょう。

 その後、クリーク・アンド・リバー社に転職しても、やはり同じ理由で辞めていく若手社員が多く、それで私は痛感したのです。