内戦が続くシリア。いつになったら停戦するのだろうか…

 シリアの国情は長い期間にわたって荒れ狂っている。

『シリアからの叫び』
ジャニーン・ディ・ジョヴァンニ(著)、古屋美登里(訳)
亜紀書房
256ページ
2300円(税別)

 ことの発端は2011年。2010年に起こったアラブの春を端緒として過激化した反政府運動と、それに対抗するアサド大統領に率いられた政府軍によって内戦が勃発。ジリジリと進まない市街戦、非人道的で歯止めのかからない拷問、市民へのレイプ被害など無数の事態により状況は泥沼化していく。国連難民高等弁務官事務所によるとシリアからの難民は500万人を超えたという。外務省のデータによると2012年のシリア人口は2240万人だから、尋常な数ではない。

 いったい、シリアで何が起こっているのか。そもそもなぜこのような戦争が起きてしまったのか。そこで暮らす人々は何を考えているのか。本書『シリアからの叫び』はそうした疑問に答えるべく、政府軍、反体制側といった立場を問わず、シリアの人々に対して寄り添うようにして行われた取材をまとめた渾身のルポタージュである。ジャーナリストだけ数えても94人もの犠牲者が出ているシリアなので、ただでさえ命がけの取材内容を、見事な筆致で描き出していく。

レイプ、拷問

 事実上の戦争が起こっているわけだから、シリアで起こっていることは何もかもが問題といえるのだが、とりわけ深刻にみえるのがレイプ/拷問による市民への被害である。シリア国連調査委員会のレポートによれば、シリア難民たちは脱出理由のひとつに誘拐やレイプ、拷問の危険性が高まったことをあげているが、著者が調査を行った2012年頃から日常的に行われていたようだ。

 本書にもレイプ被害にあった犠牲者の生々しい声が集められている。レイプは被害者からしてみればただでさえ最悪の事態だが、結婚するまでヴァージンであることが求められるイスラム教の女性にとってはより深刻な結果をもたらす。レイプ被害を受けることで結婚ができなくなり、社会から孤立せざるをえなくなるなど、精神的な被害がより重体化するケースがあるからだ。