場所を北京(北緯39°(*4))とすると、冬(2月1日)の「夜」は13時間55分、春(4月1日)の「夜」は11時間20分となります。なんと、2時間35分減!

 ではその不定時法での夜の時間のうち3分の2を睡眠に当てた場合、実際の睡眠時間はどうなるでしょう?9時間17分と7時間33分。1時間44分も減ってしまいました。

 でも実はそんな程度の話ではないのです。

問題は時期と気温。春といっても晩春のお話

 この『春暁』は、「春晩絶句」に分類されています。つまり晩春、4月末から5月上旬の詩(*5)だということです。そこらの教科書の解説文にあるような、早春の詩ではありません。

 すると、夜の時間は4月よりさらに1時間以上短くなり、10時間6分に。

 先ほどと同じ計算をすれば睡眠時間は、6時間44分。これじゃ、眠いはずです。

 それだけではありません。もう一つ日本人が引っかかるワナがあります。それが気温です。

 舞台は日本ではなく中国、そして内陸の都市です。寒暖差が激しい大陸性気候で緯度は秋田程度。3月や4月上旬ではまだ暖かくないのです。4月1日の過去平均最低気温はわずかに3℃

 これは平均なので実際には、氷点下になることも度々です。暖房も完備しない唐の時代に、これで「ぬくぬくとした眠り」とはおかしな話です。

 晩春5月上旬であれば最低気温も10℃まで上がってきます。人間が布団の中で最も気持ち良く感じるのは、最低気温が6℃以上のときとか。これなら「ぬくぬくとした眠り」も完璧でしょう。

*4 東京が北緯35°。39°は秋田と岩手と同じ。
*5 詩の後半「花が散って」とあるので春も終わりということ。