非正規として働く人が増加している。非正規という働き方は、長期化すると、正社員との収入格差を生じさせたり、能力形成機会の損失を招いたり、未婚化にもつながるといわれ、正社員に移行することの重要性が叫ばれている。

 筆者もそう考えていた。どうすれば、非正規で働く人が正社員に移行できるのだろうかと。問題の突破口を探し、30代の大卒男性の非正規社員を対象に、全国調査を実施した。その中で、非正規という働き方に対する多くの誤解や、正社員移行を解決策とする議論の限界が見えてきた。ここでは、調査から見えてきた、30代の大卒男性の非正規という働き方の実態を中心に紹介したい。

「非正規という働き方」への誤解

 非正規と言えば、「不安定」「労働時間が短い」「収入が低い」「親にパラサイトしている」といったイメージを持つ人が多いかもしれない。では、その実態をみていこう。

●非正規といっても、雇用は継続している

 非正規の64.0%が、雇用契約期間を定めて雇われていると回答した。しかし、雇用契約が更新される可能性が高いと回答した人は74.0%に達した。図表1は、雇用契約期間と勤続年数である。

 雇用契約期間は1年未満が55.6%で、残りのほとんどが1年半未満であるが、現在の職場の勤続年数は雇用契約期間よりも長い傾向にある。図表では詳細の表記はしていないが、勤続年数が5年以上のものも2割にのぼる。このデータから、契約更新が繰り返し行われている実態がうかがえる。