「報道ガイドライン」には
自殺報道での前例も

 ガイドラインをつくったきっかけは、同じように以前から問題を感じていた荻上さんのラジオに出演したことという。このような報道ガイドラインについては、WHOが2000年に発表した自殺事例報道のあり方に関する勧告がある。2008年には「自殺予防 メディア関係者のための手引き改訂版」が発表されている。この中で提唱されているのは、「自殺の報道を目立つところに掲載したり、過剰に、そして繰り返し報道しない」「自殺既遂や未遂に用いられた手段を詳しく伝えない」など。センセーショナルな自殺報道は特に若年層の模倣自殺を招く危険性があるためだ。

「日本では2006年に自殺対策基本法ができたときに、ガイドラインが翻訳されました。もちろんいろんな批判がありました。ジャーナリストの主体性を無視するのかとか、国民の知る権利はどうするのかとか、お上から一方的にガイドラインを与えるのではなく、話し合いのプロセスが重要ではという話も。ただ現在では、スポーツ新聞や週刊誌を除いて、大手のテレビ局や新聞は、ある程度このガイドラインを踏まえるようになっています。同じことが薬物事件に関しても重要ではないか」(松本さん)

 松本さんや薬物依存症に関わる支援者らは、「覚せい剤やめますか、人間やめますか」「ダメ。ゼッタイ。」といった薬物乱用防止に関するキャンペーンのあり方、さらに有名人が薬物事件を起こすたびに、「薬物依存からは回復不能」「復帰させるべきではない」といった報道が繰り返されることを危険視する。薬物を使用した人を責め立て、孤立させるキャンペーンや報道は、国際的な流れと逆行するという意見もある。

日本は薬物に厳しく
アルコールに寛容の指摘も

 WHOでは2014年に規制薬物使用の「非犯罪化」を推奨するガイドラインを出した。これは、厳罰化では「薬物戦争」は終結しないという結論からの推奨だ。例えば、ポルトガルでは2001年に規制薬物の所持を非犯罪化。その結果、薬物依存症の治療を受ける患者が増加し、薬物使用者のHIV感染率は低下した。