デフォルトか、支援継続か──ギリシャ危機が臨界点に達している。追加の財政赤字削減策を掲げるギリシャ政府に対する信認は国内外で低い。負担を強いられ続けるドイツやフランスなどのユーロ圏諸国は、苦渋の選択を迫られている。(「週刊ダイヤモンド」副編集長 遠藤典子)
連日、首都アテネの国会議事堂前に集まる5万人もの群衆に、いつからか失業者と思しき、若者の姿が交じり始めた。頻発するデモやストライキはこれまで、“既得権者”が首謀してきた。労働人口の約4分の1に当たる公務員の給与削減や、専門職制度自由化に対する激しい抵抗だった。ギリシャでは、パン製造業者、タクシー所有者など150種以上もの職業が、専門職として保護、優遇されている。
一方、緊縮財政によって2008年に8%以下だった失業率が、10年には14%を上回り、そのしわ寄せが若年層に集中し、彼らの政府不信に拍車がかかっている。
市場はギリシャ政府に対し、最後通牒を突きつけている。
米格付け大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスは6月1日、ギリシャ国債格付けをB1(Bプラスに相当)からCaa1(CCCプラスに相当)に3段階引き下げたと発表、「同国格付けはすでに投資不適格級の水準にある」とし、さらなる格下げの可能性も示唆した。そのうえ、「デフォルト(債務不履行)に陥る確率は少なくとも50%」と言い放った。
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)スプレッドは、一時1600ベーシスポイント(1ベーシスポイントは0.01%)に達し、ギリシャ国債利回りとドイツ国債利回り(いずれも10年債)とのスプレッドは、一時1400ベーシスポイントにまで拡大した(図1参照)。
ギリシャは昨年5月、“トロイカ”──国際通貨基金(IMF)、欧州委員会(EC)、欧州中央銀行(ECB)──合意による1100億ユーロの支援を取り付け、彼らが策定した経済調整プログラムにのっとった再建を進めている。
その柱となるのが、政府債務削減のための“民営化”──国有資産(国有企業株など)の売却である。4月には、13年までに150億ユーロ、15年までに500億ユーロの民営化を公約し、その引き換えに、融資金利の引き下げと返済期間の延長を勝ち取った。