ニコラス・ケイジが映画に出ると
プールの溺死者数が増える?
「地球温暖化が進むと、海賊の数が減る」と誰かが主張したら、この人はなんておかしなことを言っているのだろうと思うかもしれないが、図表2を見ると、実際、地球温暖化が進むのに合わせて、海賊の数が減っている。
しかし、常識的には「地球温暖化が進んだから海賊が減った」とは考えにくい。一見この2つのあいだに関係があるように見えるのは、「まったくの偶然」だからである。
このように、単なる偶然にすぎないのだが、2つの変数がよく似た動きをすることを「見せかけの相関」と呼ぶ。
米軍の情報アナリストのタイラー・ヴィーゲンが執筆した『見せかけの相関』には、「まったくの偶然」の例が数多く紹介されている。
たとえば、「ニコラス・ケイジの年間映画出演本数」と「プールの溺死者数」(図表3)、「ミス・アメリカの年齢」と「暖房器具による死亡者数」(図表4)や、「商店街における総収入」と「アメリカでのコンピューターサイエンス博士号取得者数」(図表5)のあいだには、それぞれ強い相関関係があることが示されている。
言葉にするとあまりにもバカげた関係だが、2つの変数をグラフにしてみると驚くほどきれいな相関関係が見てとれる。
まさに「風が吹けば桶屋が儲かる」といったところだが、こうした「まったくの偶然」によって表れる相関関係が意外にも多いということを心に留めておかねばならない。
「見せかけの相関を因果関係と勘違いする人なんているのか」と思うかもしれない。しかし、株価の予測をする人たちの中には、まったくの偶然で生じる見せかけの相関を、根拠はないがよくあたる経験則として信じている人も多い。
たとえば、宮崎駿監督率いるスタジオジブリの映画が日本のテレビで放映されると、アメリカの株価が下がるという「ジブリの呪い」の話を聞いたことがある人もいるだろう。
この法則は、アメリカの『ウォール・ストリート・ジャーナル』までもが取り上げて話題となった。これはまさしく、「まったくの偶然」による見せかけの相関の典型例だ。(注3)
「因果関係かどうか」を検討するときには、2つの変数の関係がまったくの偶然にすぎないのではないかということをまず疑ってみることが重要である。
(次回は、チェックポイントの2と3を解説する)
タイラー・ヴィーゲン ウェブサイト(http://tylervigen.com/spurious-correlations)
Vigen, T. (2015) Spurious Correlations Hardcover, Hachette Books.