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現金好き日本人に
デジタル決済をどうやって使わせるか

――PayPal日本法人代表に聞く

大河原克行
【第146回】 2017年5月18日
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――日本でデジタル決済が遅れている理由はなんでしょうか。

曽根 それにはいくつかの理由があるといえます。1つは、クレジットカードの仕組みそのものが、日本人にとっては「借金」というイメージがある点です。決済が完了し、支払いはそれから1ヵ月後というサイクルは、その間、借金をしているという感覚があり、これが日本人の気質にあわないという部分があったのではないでしょうか。

 また、現金での取引の方が安全であるという日本人ならではの感覚も存在します。実際には、クレジットカードの決済は安全なのですが、感覚的に現金を持ち、それで決済した方が安全と思っている人が多いことは否めません。

 最後に、自分の持っている予算の管理が、デジタル決済よりも、現金や貯金の方がやりやすいという認識もあるのではないでしょうか。現金の場合には、手元に100万円があった場合、そこから使った分だけを引いていけばいいわけですが、クレジットカード決済の場合、手元に100万円が残ったまま、実際には10万円無くなっているという計算をしなくてはなりません。こうした管理のしにくさもマイナスに働いています。デジタル決済が欧米に比べて浸透していない背景には、こうした日本人ならではの気質が影響していると分析しています。

 また、ビジネススキームの観点からも課題があるといえます。それは、日本のクレジットカード決済やオンライン決済の料率が高く、これが加盟店のカバレッジの低さにつながっているという点です。米国では、オフラインショップでも、オンラインのショップでも、クレジットカード決済を導入した場合、1件ごとの料率は1%~1.5%です。英国やオーストラリアではさらに低い料率となっています。しかし、日本では3~5%程度の料率となっており、収益に対する負担が大きくなります。

――日本人の気質を背景にしたデジタル決済の遅れは、PayPalも直面する課題だといえます。一方で、料率の課題については、むしろPayPalにとってはビジネスチャンスだといえますね。

曽根 日本での料率が高いのには理由があります。デジタル決済において、1対1のトランザクションを行う際に、その間に、リスク管理を含めて、様々な付加価値を提供している事業者があり、それが様々なコストが発生することにつながっているからです。しかし、この中間コストを排除し、企業と消費者を1対1でつなぐことができる環境が構築できるのであれば、欧米に比べて圧倒的に高いといわれる、いまの料率を軽減させることができるようになります。

 PayPalでは、企業と消費者のアカウントをつなぐという意味では、中間部分をショートカットできるサービスも提供できます。料率を下げたり、顧客に対して付加価値の高いサービスを提供できることは可能です。加盟店の課題を理解し、システムのスケールを活用し、中間を排除すれば、デジタル決済が広がり、そのなかでPayPalにもチャンスが生まれると思っています。

 PayPalのビジネスモデルは、支払いを受ける店舗などの企業側と、支払う個人のネットワークによって、成り立つ構造です。両者が増加することで、エコシステムが大きくなります。ただ、PayPalにとって、日本において、企業と消費者の利用拡大を一気に加速させるようなベースが、いまのところ明確には存在しないのが課題です。

 米国や英国では、eBayという巨大なプラットフォームがあり、そのなかでPayPalの決済が事実上の標準決済手段となっていました。そのため、eBayのコンシューマユーザーは、そのままPayPalのアカウントを持っているという前提があり、これによって、企業側もPayPalを活用するという好循環が生まれていました。これがPayPal普及の第1歩だったわけです。しかし、日本では、この最初の一手が打てない状況にあり、そこに、日本における大きなチャレンジがあるといえます。

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