「自分自身」と「自分の考え」を同一視しない

モンキーマインド、つまり、雑念が頭を占拠している状態を脱するうえでは、この認知行動療法的なアプローチが有効です。モンキーマインドを解消すれば、脳は本来の力をフルに発揮できるようになりますから、集中力や判断力だけでなく、読み書き計算のような処理能力、創造性にもプラスの影響が出てきます。

突然ですが、自分が駅のプラットホームにいるところを想像してみてください。そこに電車がやってきます。キーキーとうるさいサルが乗っている電車です。

電車はしばらく駅に停車していますが、あなたはホームにそのまま留まりましょう。しばらくすると電車は、サルを乗せたまま去っていきます。次から次へと別の電車がやってきても、どの電車にも乗りません。ずっとホームで電車の往来を見ています。

シンプルですが、これだけです。言うまでもなく、サルは「雑念」の比喩ですね。
ここで大切なのは「サル=雑念」に対して傍観者であり続けること。

ふだん、私たちはサルを積み込んだ電車がやってくると、なぜかそれに乗り込んでしまい、振り回されることになりがちです。これはつまり、「自分自身もそのサルたちの一員だ」と思ってしまっているからにほかなりません。

しかし本来、あなた自身はさまざまな考えの容れ物でしかありません。駅と電車を同一視するのが馬鹿げているように、あなたとサルとを同じものとして見る必要はないのです。どんな雑念も、一時的に脳を訪ねてくるお客さんでしかなく、本来あなたとは関係がありません。

にもかかわらず、私たちは「考えている自分」と「考えていること」とを区別することをつい忘れてしまいます。

くよくよと悩んでいるときには、「考え」が悩ましいのではなく、「私自身」が悩ましいのだと思ってしまいます。思考がまとまらずに同じところをループしているときには、自分自身が堂々めぐりしているように感じてしまいます。

「雑念と自分とを同一視しないこと(Non-identification)」こそが、モンキーマインドを解消する最善の手段です。実際、いつも心に余裕がある人は、自分と考えとを区別し、うまく距離をとっています。