「よく顔を出す考え」には名前をつける

「同じこと」でイライラしがちな人は、頭の中に「サル」を飼っている久賀谷 亮(くがや・あきら)
医師(日・米医師免許)/医学博士(PhD/MD)。イェール大学医学部精神神経科卒業。日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間にわたり従事する。現在、ロサンゼルスにて「TransHope Medical」院長として、マインドフルネス認知療法やTMS磁気治療など、最先端の治療を取り入れた診療を展開中。臨床医として日米で25年以上のキャリアを持つ。趣味はトライアスロン。著書に『世界のエリートがやっている最高の休息法』『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』(ダイヤモンド社)がある。

これに慣れてくると、誰でも気づくことがあります。

頭のなかのプラットホームには多種多様な電車が発着しているようで、じつはごくごく限られた種類の電車しか走っていないという事実です。

しかも、悪さをしている電車は、そのなかでもごく一部です。

繰り返し現れる電車に気づいたら、ラベリングをしましょう。要は「考えに名前をつけることで、認知の歪みに気づく」わけです。やり方はいろいろとありますが、やはりブリージングスペースのときのように、1つのセンテンスにまとめてみるのがいいでしょう。

ラベリングの効果は絶大です。雑念に流されそうになっても、「ああ、またこの電車か……」と落ち着いて対処できるようになります。

その際に最も重要かつシンプルなのは、「善し悪しで判断するのをやめる」でしょう。繰り返し姿を現わす厄介な雑念は、たいてい一定の偏見を含んでいます。つまり、「○○はいい」「○○はダメだ」といった価値判断が入り込んで、それがスムーズな思考を邪魔しているのです。

マインドフルネスの基本はノンジャッジメンタル(判断しない)です。価値判断を取り除くと、その認知にはじつは何も根拠がないかもしれません。そのことに気づくと、うるさいサルの電車は、やがて脳のプラットホームに停車しなくなるでしょう。