Photo by Masaki Nakamura
4K、8K、有機EL、量子ドット──。テレビの「画質」をめぐるさまざまな技術を、折に触れてアピールしてきたメーカー各社が、競争軸を「設置場所」に移し始めた。「室内のどこにテレビを置くのか」という、原始的ともいえる提案に力を入れ始めたその背景には、消耗戦に疲れ切ったメーカーの深い苦悩が見え隠れしている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)
ドイツ・ベルリン市内で、毎年9月初旬に開催される、世界最大級の国際家電展示会「IFA」。その事前イベントとなる「グローバルプレスカンファレンス2017」が4月20日から、ポルトガルの首都リスボンで開催された。
55ヵ国から集まった300人以上の報道陣を前に、蘭フィリップスや独ゼンハイザーなどが自社の製品戦略を訴える中で、注目を集めたのが韓国サムスン電子のテレビだ。
サムスンは、画面上の色域を広げる量子ドット技術(Quantum Dot)を採用した液晶テレビを、新たに「QLED」と名付け、目下拡販を進めている。だが、プレゼンテーションの中で触れたのは、冒頭の数分だけだった。
代わって、説明に多くの時間を割いたのが、5月に投入予定の「ザ・フレーム」という壁掛けの大型液晶テレビだった。
テレビの外枠部分を、木目調や花柄など約100種類の中から自由に着せ替えすることができ、絵画のように壁にかけて設置できるのが特長だ。テレビを視聴しないときは、静止画を一定時間映し出し、室内に飾った絵画と並べて壁に設置しても、違和感が少ないよう工夫している。
さらに、テレビを壁掛けにした場合、電源などのケーブルによって見栄えが悪くならないよう、極小化した「見えないケーブル」も併せて開発した。