「次の次の頭取まで決まっている」といわれるほど“無風”が常だった三菱東京UFJ銀行のトップ人事だが、小山田隆頭取が就任からわずか1年余りで退任するという不測の事態が発生。異例の頭取交代劇は、それにあらがう危機対応プランの痕跡と、“無風”が前提であるが故の潜在リスクを浮き彫りにした。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

三菱東京UFJ銀行の頭取交代会見に出席した、6月に新頭取となる三毛兼承副頭取(右)と、平野信行・三菱UFJフィナンシャル・グループ社長

「体調が悪化し、思うに任せない。頭取の職責遂行に支障を来しかねない」

 5月19日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の中核子銀行である三菱東京UFJ銀行の小山田隆頭取は、三菱UFJFGの指名・ガバナンス委員会に対して、そう辞意を表明したという。

 三菱東京UFJの頭取人事には「鉄のおきて」が二つ存在した。一つが「任期4年の不文律」。もう一つは「頭取の履歴書」だ。歴代頭取は東京大学か京都大学卒で、旧三菱銀行の企画畑出身と相場が決まっていた。

 この二つを組み合わせて、現頭取の3~5年次下の「履歴書」に合う人物を探すと、「次」どころか「次の次」の頭取まで分かる。それほど“無風”が常なのが、三菱東京UFJのトップ人事だった。

 ところが、今回は他社でも通常はあり得ない就任1年余りでのトップ交代。しかも、小山田頭取は今年4月に業界団体のトップである全国銀行協会の会長に就任したばかり。まさに異例ずくめだ。

 最初に小山田頭取が健康不安を打ち明けたとされるのが2月。その後、三菱UFJFGは水面下で危機対応プランを発動し、3月には万が一の場合の次期頭取を選んでいた。それが、6月に次期頭取へ就任する三毛兼承副頭取だ。