今年は大手ITベンダーにとって「終わりの始まりの年」と記憶されるかもしれない。そんな“地殻変動”が静かに進んでいる。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が、ITシステムにクラウド(インターネットでつながったコンピューター上で運用するシステム)の採用を決め、金融・IT業界の注目を集めているのだ。
銀行のITシステムといえば、かつては自社保有のメーンフレーム(大型汎用)・コンピューター上で運用する最も“重い”システムの代表格だった。勘定系と呼ばれる基幹系システムの統合や更新には数年を要し、銀行の経営を左右する。加えて、市場や業務に関わるシステムも業務の多様化やフィンテックの普及で急増し、MUFGの場合、その数はグループ全体でなんと1000を超える。
そんな超重量級のITシステムを持つ銀行が、ITシステムをそもそも保有しないという、正反対のクラウドの採用に動いたのは、その維持費用が膨れ上がっているからだ。例えばMUFG傘下の三菱東京UFJ銀行(BTMU)では、保守費用も含めたIT投資費用は年間1000億円にも上る。
こうした中、MUFGでは、いかに費用を抑え、最新技術も取り入れた上で短期間でのシステム開発を行うかという課題に対応するため、クラウドを選択。現在はクラウド最大手の米アマゾンウェブサービスと組み、業務システムの一部から移行を進めている。