今年に入り、若い女性のおしゃれにある変化が生まれた。それは、昨年までスカートからブラウス、ワンピースまでファッションシーンを席巻していた「小花柄」から、「ペイズリー柄」へと流行りが移行していることだ。
ペイズリー柄とは、勾玉(まがたま)模様のこと。世界各地では、マンゴーや蓮の花びらなどを図案化した植物模様とされている。
この模様を全面にあしらったチュニックが今年定番化しており、スカーフなどでも人気だという。これは、今年のトレンドであるエスニック風やボヘミアン風のファッションの流れを汲むもので、エキゾチックなムードを醸し出す。
そしてこれからの季節、最も注目すべきアイテムは、ペイズリー柄の水着だ。東レでは、素材が柔らかくゆったりしたデザインと、カラフルなペイズリー柄が今年のトレンドだという。またパルコでは、後ろから見るとビキニなのに、前から見るとワンピースである「モノキニ」という水着が人気で、ペイズリー柄が主流だという。オッシュマンズでも、ハワイを代表する人気ブランド「PUALANI」(プアラニ)を別注し、花柄と共にペイズリー柄を実現したほどの力の入れようだ。
ペイズリー柄の流行は、実はこれが初めてではない。以前人気を集めたのは、実にバブル期まで遡る。筆者も当時のことを鮮明に記憶しているが、ペイズリー柄のシャツやスカーフなど、小技を効かせるちょっと大人なファッションが、通の間で人気だった。
今回の流行は、当時から20年以上を経ることになるが、バブル期は女性も肩パッドが厚く入った戦闘的なジャケットを好むなど、どこか挑発的な雰囲気が濃厚だった。そして平成になり、流行は小花柄からペイズリー柄へと移行しているわけだが、これには先の震災も無関係ではないかもしれない。
大震災を機に、ナチュラルで可愛い女性らしさを表現する時代から、1人ひとりが力強く「個」を強調する時代に変わってきていると言えるのではないか。
歴史は繰り返される……と言うが、ファッションもまた然りである。おしゃれの変遷は時代を濃密に反映しており、この点も非常に興味深い。
(田島 薫/5時から作家塾(R))