つがわ・ゆうすけ/ハーバード公衆衛生大学院(医療政策管理学)研究員。東北大学医学部卒業後、聖路加国際病院、世界銀行を経て現職。ハーバード公衆衛生大学院でMPH(公衆衛生学修士号)、ハーバード大学で医療政策学のPh.D.を取得。専門は医療政策学、医療経済学。ブログ「医療政策学×医療経済学」において医療政策におけるエビデンスを発信している。

 調査は、米ハーバード公衆衛生大学院の津川友介研究員らの研究チームが行った。学会のガイドライン通りに医療を提供しているかどうかなど、「医療のプロセス」と医師の年齢の関連については以前から研究されていて、最新の医学知識は高齢の医師の方がむしろ乏しく、ガイドライン通りの治療を行わない傾向にあることが示唆されている。しかし、医師の年齢と患者の死亡率などのアウトカムの関係を分析した調査は行われてこなかった。津川さんらのチームは今回、ここに踏み込んだ。

 興味深いのは、医師の年齢を連続変数で見ると、60歳を境に患者の死亡率が急激に高まったことだ。津川さんは、高齢化に伴う医師の認知機能や運動機能の低下がこの急な変化に影響している可能性があるとみている。

ベテラン医師が優秀とは限らない
問うべきは最新の医療知識の有無

 今回の調査結果からは医療現場が抱えるいくつかの課題が見えてくる。

 まずは患者の視点からの課題だ。医療現場の第一線で長年活躍し、豊富な経験を積んだ医師の方が若手よりも頼りになると漠然と考えがちだ。こうした傾向は日本だけでなく、欧米などの患者にも共通するというが、果たして当たっているのか。

 津川さんは、最新の医療知識をフォローできるかどうかが、医師にとって重要な課題だと指摘する。ベテランの医師が患者の信頼を獲得しやすいのは、それまでの豊富なキャリアに裏打ちされた技術の高さによるところが大きい。しかし、学会のガイドラインは早ければ数年おきに新しく置き換わる。それを常にフォローできているかは別問題だ。豊富なキャリアを積み上げ、なおかつ最新の知識を身につけた優秀なベテラン医師もたくさんいるが、日進月歩の医療技術を常にフォローし続けるのは、高齢な医師にとってハードルが高い。

 これに対して若手の医師は大学医学部で最新の知識を身につけられる上、先輩医師のフォローやアドバイスも受けやすい。そのため、その時々のスタンダードな治療(標準治療)を提供するのが比較的容易な環境にある。