5月11日、『週刊ダイヤモンド』主催で定期購読者向けの特別セミナーが東京・青山で行なわれた。この日のセミナー講師は、ボストン コンサルティング グループ シニア・パートナー&マネージング・ディレクターの御立尚資氏。今回、「変化の時代とその源流」をテーマに、政治、経済ともに予測不能なこの激動の世界をどう捉えていくべきかを語っていただいた。

「こんばんは。御立です。よろしくお願いします。 

御立尚資・ボストン コンサルティング グループ シニア・パートナー&マネージング・ディレクター

最近、世界の政治や経済がめまぐるしく動いています。米国ではトランプ大統領が就任し、ヨーロッパもワサワサしていて、日本の周辺も落ち着かない。そんな今、我々が生きている21世紀の前半というのは、『並存の時代』なのではないかと思っています。

『平家物語』が書かれた平安時代の最後、平家が栄華を誇っていた時代がありました。平安時代は貴族の時代でしたが、実際はそのあとやってくる武家時代が実は始まっていて、それまでずっと権力を持っていた天皇家と貴族がだんだんその役割を終えていったけれども、まだまだ権威だけはあって、でも、現実には武家の台頭を抑えることができなくなってきていた。この時代は、貴族の時代とその後に来る武家の時代が並存していた、ちょうど変わり目の時代だったのではないか、と思います。

 同じように今は、まさに変わり目、そうした併存の時代です。20世紀は工業化社会を作ってそれを資本主義で支えるというモデルで人類が豊かになってきましたし、我々も恩恵を十分に味わってきました。まだそこに我々はいるけれども、どうも、今までの工業化モデル、それを支える高度資本主義モデルのメリットとデメリットが逆転し始めているように感じます。

 ただ、これから来る時代のことは、将来のことですから全部はわかりません。でも、今現在起こっていることに“将来の兆し”があることがわかるし、“大きな変化を起こすような原動力”を感じます。私たちは、それを理解して将来を作っていくことが非常に重要です」

 その兆しの読み方について、御立氏は「エレファントカーブ」に注目して解説した。エレファントカーブとは、世界銀行のエコノミストだったミラノビック氏が発表したもので、1988年から2008年までの間に「世界で誰が豊かになったか」を示しているもの。グローバリゼーションの進んだこの約20年間に、先進国の富裕層はますます豊かになり、新興国の中間層も豊かになったが、一方で先進国の中間層の所得が最も伸び悩み、ないしは下がっていることを示したデータとして注目された。

「エレファントカーブからわかるのは、2008年までは、リーマンショックまで先進国の富裕層は富を6割以上増やしていたこと。そして新興国の中間層、これは工業化が進んだASEANや中国で中流階層に入れるようになった人たちですが、ここがすごく豊かになっています。

 ところが、英、独、仏を中心とする西ヨーロッパとアメリカとカナダと日本、いわゆるG7の先進国の中間層は20年間、富を全然増やしていない。ここが根本的な話なのです。ここが、先ほど申し上げた"大きな変化を起こしそうな原動力"の根本です。

 20年間全く豊かにならなかった、しかも自分の親世代までは豊かになってきた今の先進国中間層が、自分の国の金持ちだけがさらに金持ちになり、特に工場で働いている人たちは、自分の仕事がどんどん新興国に奪われていった。そして不満だらけになったのですね。この不満が原動力となって実際に起きた変化が、トランプ政権の誕生です」