また、日ごろの仕入管理は従業員に任せていますが、ここぞというときの“攻めの原価コントロール”は、今でも自ら行なっているといいます。

大林 「たとえば、冬の売上が落ち込む時期とかに、あえて原価率を60%ぐらいかけて、良い肉をお手ごろな価格でステーキとして出したりします。そういうわかりやすいメニューをリーズナブルな価格で提供することで、集客に弾みをつけることができるんです」

原価管理の重要性を教えてくれる<br />池袋の繁盛店

 もちろん、そうやって特定のメニューにあえて原価をかけるときも、ほかのメニューの原価を細かくチェックして、全体として原価率がどのぐらいになるかはしっかりと計算しているそうです。一見大胆に見えて、実は緻密な計算に基づいて行なわれている、こうした経営判断のひとつひとつが、大林さんが数々の繁盛店を作り続けてきた秘訣のひとつなのです。

「仕入を正確に管理できる『BtoBプラットフォーム受発注』は、飲食店の経営に絶対に不可欠なシステムだと思う」と大林さんはおっしゃいます。

 私自身、その通りだと思うし、「BtoBプラットフォーム受発注」を十二分に使いこなし、仕入の管理、原価率のコントロール、スペシャルメニューの提供、スタッフの育成まで行なっている大林さんの仕事ぶりに感動すら覚えました。

 「BtoBプラットフォーム受発注」を導入している飲食店の中でも、これほどまで徹底して仕入が管理されている店は稀なのではないでしょうか。やはり繁盛店には繁盛店になる明らかな理由があるのです。

 先述したように大林さんの会社で「BtoBプラットフォーム受発注」を導入したのは独立から1年後、店舗数が3店になった時点でしたが、実のところそれは一緒に会社を経営するパートナーの意見を尊重したためであり、大林さんご自身は「1店舗目から入れたかった」そうです。
 
 その点については私も大林さんとは同意見で、もし今開業準備をしている方がいれば、「1店舗目から、BtoBプラットフォーム受発注は導入したほうがいい」とアドバイスをしたいと思っています。

 たしかに導入コストはかかります。しかし、自分の店がどのぐらいの原価率で動いているのか、まったく把握できていないままに営業を続けるのは、暗闇の中、手さぐりで経営するのと同じことです。もしメニュー作りの際に想定原価を決めていたとしても、実際にその数字どおりにできているのかどうか検証できないまま、数ヵ月走り続けなければなりません。仕入先からの請求書が届いてやっと正確な原価がわかり、「え! そんなにかかってたの!? じゃあ、急いで対策を立てなきゃ!」と考えたとしても、その数ヵ月の損失は取り戻せません。もしその間に資金を使い果たしてしまい、もはや抜本的な改善ができない、なんてことになったら目も当てられません。

 売上予測がどれだけで、実際に日々営業することでどれだけの売上が上がり、一方でどれだけのコストがかかっているのか。そうした数字をリアルタイムで把握して、PDCAサイクルをまわしていってこそ、はじめて「経営」が成り立ちます。

 飲食店のコストのうち、もっとも把握しづらく、かつ決定的に重要なのが、日々の食材にかかる原価です。「BtoBプラットフォーム受発注」を使えば、その原価を日々正確にリアルタイムで把握することができます。
 
 それゆえに、これからお店を始める人にとって、そしてもちろんすでにお店をやっている人にとっても、「BtoBプラットフォーム受発注」は必須のITサービスだと言えるのです。
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