OPEC(石油輸出国機構)加盟の14カ国と非OPEC産油国10カ国は、5月25日に開催された合同閣僚会合において、日量約180万バレルの現行の協調減産を、7月以降2018年3月まで9カ月延長することを決めた。
しかし、この日の原油相場は、国際指標である欧州北海産のブレント原油で前日比2.50ドル安の1バレル当たり51.46ドル、米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油で2.46ドル安の48.90ドルと、共に約5%の大幅下落となった。
今回の会合を前に、さらなる減産期間の延長や減産幅の拡大が行われるとの期待があったため、9カ月の延長では、市場の期待値に届かなかった。
1月開始の現行の協調減産は、当初、6月までの半年間で過剰な石油在庫を払拭し、石油在庫の水準を過去5年平均並みにすることを目標としていた。しかし、在庫削減ははかどらず、4月下旬には、産油国が設置した技術委員会で6カ月の減産延長が勧告され、減産延長が既定路線となった。
さらに、5月に入って、原油相場が軟調に推移する中で、減産期間を一段と延長する動きが強まった。15日には、サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相とロシアのノバク・エネルギー相が協調減産を9カ月延長する必要があるとの認識で一致した。その後、長期間の減産には消極的だとみられていたイラクなども含めて、各産油国が9カ月延長に賛同を示していった。
25日の会合では、12カ月の延長や減産幅拡大も検討されたが、「9カ月の延長が最適」(ファリハ氏)との判断に至ったようだ。ただし、11月30日予定の次回会合で、「減産のさらなる延長が決定される可能性もある」(同)とされた。
だが、果たして、今回の減産延長で、原油在庫の削減や相場の下支えは実現するのだろうか。
米国の原油在庫を見ると、3月末にかけて統計開始以来の高水準にまで増加していたが、4月以降は減少傾向で推移している。
ガソリンの需要期を控えて製油所の原油需要が増加する6~7月は、さらに原油在庫が減少するとみられる。また、中長期的には、インドや中国の原油需要が増加し、徐々に需給を引き締めると考えられる。
しかし一方で、米国のシェールオイルの増産が需給緩和要因として意識される。現在のように原油相場が50ドル/バレル前後で推移する状況下でも、シェールオイルの生産量は増加している。さらに相場が上昇するようだと、増産の勢いは強まり、結局、上値は抑えられやすい。原油相場は、かなりの長期間にわたって40~60ドル/バレルのレンジ内にとどまりそうな状況である。
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)