――今国会で審議入りした性犯罪刑法の改正点は主に5つですが、審議会で検討されたものの見送られた項目もいくつかあります。見送られた項目のうち、スクールセクハラに関するものは主に2つあると思います。1つは時効撤廃です。子ども時代の性被害は特に、被害を認識し、訴えるまでに時間がかかる場合があることから、性犯罪について時効の撤廃が検討されていました。しかし、これは見送られました。

 小学生だと性的なことの意味がわからなかったりするし、中高生でも被害を言いづらい。何年も経って、大人になってから被害を訴える人は結構います。過去の判例で言うと、時効を問題の行為があったときからではなく、卒業時点からカウントするという例もありましたが、時効をどうするべきなのかという問題は常にあります。時効が撤廃されれば被害者を救いやすくなったとは思います。残念ですね。

――事件から時間が経つことで「証拠が散逸する」とか、「子どもの記憶は曖昧で信用しづらい」という反対意見があったようです。

 証拠が散逸するといっても、殺人の時効はなくなっています。子ども時代の証言が信用できるかということについては、本当はできるだけ早い時期にきちんと専門家が聞き取り、証拠として証言を得ておくことが大事です。しかし、仮にそうじゃないまま時間が過ぎてしまったとして、「子どもの言ってることだから信用できない」というのはどうなのか。この発想に大人のずるさのようなものを感じます。

――もう一点は、「地位・関係性を利用した性的行為に関する規定の創設」について、監護者(親権を持つ者など)による性的行為に関する規定が新たに設けられる予定です。これにより監護者からの性的行為について被害を訴えやすくなりますが、一方で雇用者と被雇用者や、指導者と被指導者などの関係性についての規定は見送られました。

「関係性を利用した性的行為」とはつまり、強姦などの要件である「暴行・脅迫」を用いなくてもその行為に及ぶことができる関係性、支配関係があるということ。教員と子どもというのは、監護者と子どもに近いような関係性だと思います。学校は子どもにとって長い時間を過ごす場所であり、生活に占める比重がとても大きい。小学校の場合、一人の担任と日中の大半、一緒にいることになります。

 暴行や脅迫をしなくても、先生だから言葉巧みにだまされてついて行ってしまう。『スクールセクハラ』でも書きましたが、教師から「カラオケをするだけ」と言われてホテルに連れ込まれ被害に遭ったケースがあります。子どもは男と女という意識ではなく先生と教え子と思っている。「まさか先生がそんなことをしないだろう」という意識があり、教師がそれを利用するのは非常に簡単です。本来、監護者に類似する立場として規定を設けるべきだと思います。

(※2)現在国会で審議されている性犯罪刑法の改正法案では、強姦や強制わいせつの非親告罪化が検討されている。