「お客様」から「プロジェクトメンバー」へ

「システムに欠陥が多すぎて使えない」
「開発や保守・運用費用が高すぎる」
「せっかく入れたシステムが十分に使われていない」
「そもそも、経営の目的に合致したシステムになっていない」

問題は、さまざまなところにあるでしょう。

しかし、総じて言えば、あらゆるトラブルに触れてきた経験から私が強く感じるのは、「システム開発は発注者とベンダの協働作業」だと誰も教えてくれないから、ということに尽きます。

「お客様 vs 受注者」
「システムの素人 vs システムのプロ」
「言われた通りに作ってくださいね」vs「そうですか。わかりました」

そうした対立関係を乗り越えて、発注者が「お客様」から「プロジェクトメンバー」にならなければ、本当に役に立つシステムを完成させるのは困難なのです。

そこで本連載では、次回から、私が裁判所で数々のIT紛争を見てきた事例や、政府CIO補佐官として国内のシステム開発事例から収集した情報などを元にして、「金食い虫の役立たずシステム」を作らないために、特に発注者サイドの人がどんなことに気をつけるべきか、何を意識すべきかについて、お伝えしていきたいと思います。

さらに詳しい網羅的なスキルと知識は、『システムを「外注」するときに読む本』に書きました。ぜひ、合わせて参考にしていただければと思います。
 

細川義洋(Yoshihiro Hosokawa)
経済産業省CIO補佐官。ITプロセスコンサルタント。立教大学経済学部経済学科卒。元・東京地方裁判所民事調停委員・IT専門委員、東京高等裁判所IT専門委員。 大学卒業後、NECソフト株式会社(現NECソリューションイノベータ株式会社)にて金融機関の勘定系システム開発など多くのITプロジェクトに携わる。 その後、日本アイ・ビー・エム株式会社にて、システム開発・運用の品質向上を中心に、 多くのITベンダと発注者企業に対するプロセス改善とプロジェクトマネジメントのコンサルティング業務を担当。 独立後は、プロセス改善やIT紛争の防止に向けたコンサルティングを行なう一方、ITトラブルが法的紛争となった事件の和解調停や裁判の補助を担当する。
これまで関わったプロジェクトは70以上。調停委員時代、トラブルを裁判に発展させず解決に導いた確率は9割を超える。システム開発に潜む地雷を知り尽くした「トラブル解決請負人」。2016年より経済産業省の政府CIO補佐官に抜擢され、政府系機関システムのアドバイザー業務に携わる。 著書に『システムを「外注」するときに読む本』(ダイヤモンド社)、『なぜ、システム開発は必ずモメるのか!』『モメないプロジェクト管理77の鉄則』(ともに日本実業出版社)、『プロジェクトの失敗はだれのせい?』『成功するシステム開発は裁判に学べ!』(ともに技術評論社)などがある。