去る7月9日に、中国国家統計局は6月の消費者物価指数(CPI)が昨年同期比で6.4%増というデータを公表した。

内訳をよく見てみると、中国の食品価格は14.4%増であり、なかでも豚肉の価格は57.1%増という驚異的な数字が弾き出されている。今度のCPIが高くなった原因は、何といっても豚肉の価格上昇に関係があり、その値上がりだけでもCPI上昇率に2%「貢献」したと中国のメディアは報道している。豚は今回のCPI急上昇の「贖罪の山羊」(スケープゴート)となってしまった。(在北京ジャーナリスト 陳言)

 CPI増加率が20%を超えた1994年ごろと比べて、今回の6.4%では市民も政府もそれほど動揺していない。インフレはこれから本格的にやってくると予測する学者がいるが、株式や不動産市場に資金が急速に流れていく傾向も見えてこない。ベトナムのインフレ率が19.8%、ロシアが9.6%、インドが8.7%という状況と比べて、今のところ中国は平静を保っているように見えるが、水面下ではさまざまな動きが起こっている。

餌、労賃などの4要因で
急上昇した豚肉の価格

「今日はどのぐらい値段を上げたのか?」。最近、市民がスーパーで豚肉を買う前に、店員によく聞くようになった。ほぼ毎週、豚肉の価格が引き上げられてきたからだ。皮肉で聞く人もいるが、その言葉の背後には無力感、虚しさも入り混じっている。

 中国農業大学動物科技学院の王愛国教授は、人民網の取材を受けて、豚肉価格の値上がりについて分析した。「餌のトウモロコシの価格が引き上げられ、また労働者の給料も上がった。それ以外にも2つの要因がある。09年9月から10年6月まで農村での豚の値段が下がり続け、ここ1年で多くの農民が養豚を放棄した。また10年の冬の寒さが厳しく、生まれた子豚の多くが死んでしまい、豚の数をさらに減少させた」と、4つの要因にまとめている。