ファイナルファンタジー、ドラゴンクエストシリーズなどで知られるクリエイター集団スクウェア・エニックス。そこには、クリエイターを支える総務部門による「場」つくり戦略に基づいた「人が育つ場」の周到な仕掛けと工夫が散りばめられていた。
本社オフィス移転を期に「人が育つ場つくり」で組織を変えた
人材育成に苦慮している企業は多い。そんな中でも企業としての成長を続け、次々と人材を輩出し続ける企業が存在する。そうした「人が育つ組織」は、他の企業と何が違い、そこにはどのような秘訣があるのだろうか?
今回は、人が育つ「場」によって組織を変えたケースに注目し、ファイナルファンタジー、ドラゴンクエストシリーズなど、多くのヒット作、ロングセラーを連発するクリエイター集団スクウェア・エニックスを訪問した。
そこで、本社移転プロジェクトで中核として活躍したという総務部長・岡田大士郎氏にお話を聞いた。岡田氏は、人を育てる組織にするために、人材を育てる施策ではなく、人が育つ「場」つくりにこだわり、また、人事部門ではなく総務部門が主導して取り組んできたことに意味があったとも言う。
総務部門が関与する「人が育つ場」つくりとは、具体的にどんなことをしたのか、岡田氏に聞いてみた。
「働く人たちにとって、一日の大半を過ごす職場であるオフィスの環境はとても大切です。オフィスは、そこで働く人たちが価値創造活動に専心できる、快適で居心地の良い知的空間であること、また、働く人みんなが、自律的に創造活動に勤しめるワークスタイルの選択や、コミュニケーションデザインを考慮された意識空間をつくることが必要です。こうした『場』ができれば、自然と『個の力』が育まれ、自律的に『人が育つ場』が醸成されてきます。総務部門は、オフィス環境が働く人たちに与える影響を考慮しながら、コミュニケーションが活発になる仕掛けや、組織の風通しがよくなる仕組みづくりを担っている、いわば『人が育つ場』の影のプロデューサーだと言えます」
スクウェア・エニックスと言えば、言わずと知れたゲーム業界の雄。個性豊かで才能ある社員が在籍し、その働き方も多様な会社である。こうした「職人」たちを組織として統制し、パフォーマンスを最大化していくために、具体的に、どのような取り組みをしてきたのだろうか?
「総務部門が『場』つくりに本格的に取り組むきっかけとなったのは、本社移転プロジェクトでした。当時の課題は、開発環境の改善と働き方改革。今でこそ話題のテーマですが、5年前から総務視点での働き方改革を目指した場つくりを行ってきました。職場は、働く人たちの知的活動の場です。働いている社員の想いや心理を深く洞察し、日々のワークスタイルを観察してみると、そんなにお金をかけなくとも、様々な工夫ができると思います」
コスト削減のためにファシリティを考えるだけでなく、生産性向上のためにもファシリティを活用するということだ。