市場参加者が今後の利上げ消極化を予想するのは伸び悩む物価を背景としている。完全雇用であるはずの米国だが賃金は頭打ちとなり、足元では、物価の押し上げ要因だった家賃の伸び悩みが目立つ。世界的な財価格の下落傾向には歯止めがかからない。16年後半から上昇傾向となっていた原油価格も米国のシェールオイル増産などを背景に伸び悩んでいる。

 FRBのデュアルマンデート(物価安定と雇用の最大化という使命)に鑑みれば、利上げを急ぐ理由に乏しい。米国経済に利上げ(長期金利上昇)の弊害とおぼしき減速感が出ていることからも、今後の利上げの必要性に疑問符が付くのは当然だ。

 過去数年にわたって、FOMCメンバーの「理想」と市場参加者の「現実」に乖離が生じ続け、最終的にドットプロットがFF先物金利に収斂してきたことも事実である。

 米国の物価を取り巻く環境や過去の実績に鑑みれば、ドットプロットがFF先物金利に近づいてくる可能性が高いといえ、早ければ9月のFOMCで実現するだろう。

 それにはFOMCメンバーの物価見通しが引き下がる必要があり、9月のFOMCまでに3回公表される米雇用統計に非常に高い関心が集まるだろう。ここ数年、市場参加者の注目もやや下がりつつあったが、今後3カ月は久々に市場のボラティリティーの種になる重要なイベントになるだろう。

 そこで、これまで同様に賃金の伸び悩みが確認されるようであれば、9月のFOMCを経て、いよいよ米国10年債利回りの2%割れが視野に入りそうだ。

(SMBC日興証券チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)