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ITでシミュレーション! 労務コストのムダ徹底排除

シミュレーションしてみよう!
残業代リスク完全防備
【前篇】

数字で見る「定額残業代」制度の導入効果

矢島秀悟 [社会保険労務士]
【第1回】 2011年8月8日
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 さらに、平成22年4月より施行された改正労働基準法への対応策にも触れておきましょう。改正では、一部の中小企業を除いて、月間残業時間が60時間を超過した部分については残業代の割増率が1.25倍から1.5倍に引き上げられました。

 図のなかのいちばん右のチャートで残業代単価を見ると、25時間以上60時間以内の単価はさきほど算出した1953円、61時間以上の単価は、25万円÷160時間×1.5倍=約2344円となります。

   この方法で各社員のデータを個々に入力し、全社員の残業代単価を算出した後、最終的に全社的な残業代削減の対応策を考えていくのですが、これについては次回以降でお話しさせていただきます。

就業規則の取り決めで
よくある不備

   ITシミュレーションのお話からは逸れますが、定額残業代制度導入では大変重要なポイントとなりますので、ここで補足的に就業規則で定額残業代制度を決める際にありがちな不備について一言添えておきます。

 「基本給のなかに残業代を含む」

 「年俸制社員には、残業代も含めた年俸にて支給する」

  就業規則上の不備で最も目立つのがこのようなケースです。つまり、定額残業代に相当分する部分の規定が不明確である場合は、「残業代」と書いてあって「残業代」とは見なされず、法的に不備となる可能性が高くなります。

 過去の労働判例を踏まえると、定額残業代制度の導入要件は以下のようににまとめられます。

(1)定額残業代相当分の手当とそれ以外の通常の労働時間に対する賃金(基本給など)が明確にわかること
(2)定額残業代相当分の手当が、定額残業代での労働条件・雇用契約に則って支給されることを労使間で認識していること
(3)支払われた定額残業代が、実際の残業時間を労働基準法の計算により割増賃金の額を算出され、その額を下回っていないこと
(4)実際の残業時間が定額残業代分として計算される残業時間を超えた場合は、超過分を別途適切に支払っていること

 「定額残業代」相当分賃金については、たとえば、「職務時間外手当」など別手当化して、そのルールを就業規則に記載し、社員に説明、周知することが 法的に効力をもつ要件となります。また、時間外労働だけでなく、休日労働や深夜労働相当分まで含めるかどうか、就業規則上の表現を十分に検討する必要があ ります。

 次回は、前ページの図でシュミレーションした全社員分のデータを集計し、全社的にどのようにして不払いとなっている残業代を完全に消していくのかをシミュレーションしながら、対応策の立て方を考えて行きましょう。 

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矢島秀悟
[社会保険労務士]

保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士。労働保険、社会保険に関する相談や就業規則作成・監督署是正勧告対応など労務相談を数多く手掛ける。就業規則に関する執筆活動も行なっている。

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