今後10年程度で社員の約7%に当たる1万人の削減を検討していると報道された、三菱UFJフィナンシャル・グループ Photo by Takahisa Suzuki

 失業率が低下しているが賃金の上昇が遅く、物価の上昇ペースも緩やか、という現象が日本だけでなく世界的に起きている。

 欧州中央銀行(ECB)はユーロ圏の景気回復に自信を深めているが、賃金と物価が相互に影響を及ぼして上昇していく動きは、以前よりも弱いと首をかしげている。このため、6月8日の記者会見でマリオ・ドラギECB総裁は、早期の金融政策正常化を市場が織り込まないようにけん制した。

 一方、英国のインフレ率はイングランド銀行(BOE)の目標値2%を上回っている。だが、これは欧州連合(EU)離脱に関連するポンド下落による輸入価格上昇の影響が大きい。6月20日にマーク・カーニーBOE総裁は、賃金の伸びが弱いため、当面は政策金利を上げずに様子を見ると述べた。

 また、米国の失業率は17年ぶりの低水準を示している。インフレの過熱を予防するため、米連邦準備制度理事会(FRB)は6月15日に今年2回目となる利上げを決定。さらに、FRB資産の縮小に関する基本方針も公表した。

 年内にもう1回の利上げと、早ければ9月にも資産縮小を開始しそうなニュアンスを、ジャネット・イエレンFRB議長は記者会見で醸し出していた。しかし、利上げ決定当日の朝に発表された5月の消費者物価指数(CPI)は相当弱かった。食品とエネルギーを除いたCPIの前年比は、1.7%に下落(1月時点は2.3%)。そこから家賃関連を除いたCPIは、わずか0.6%しか上がっていない。