photo by Takahisa Suzuki

 東京都の小池知事は、都議選告示を前に豊洲市場への移転とともに、築地市場の土地を売却せずに再開発することを表明した。これをどのように考えたらいいのだろうか。これまでの投下資金などが事業の撤退などで戻ってこなくなる際の費用を考える「サンクコスト(埋没費用)論」と、豊洲と築地それぞれの科学的なリスク評価を基にすれば、筆者は「豊洲移転」が合理的と考えてきた。だから「豊洲移転」は遅ればせながらだが、一安心した。

 だがここまで長引いたのは小池都知事の判断ミスがあったし、さらに「築地再開発」は新たな判断ミスと言わざるを得ない。

「豊洲移転」が合理的
もっと早く決断すべきだった

 筆者なりにいえば、豊洲も築地も地下はそれなりに土壌汚染がある。

 これは東京都内、特に湾岸エリアであれば避けられない。しかし、しっかりした封じ込めをすればその上では安全性は確保できる。豊洲と築地の上屋を比較すれば、閉鎖系の豊洲のほうが格段に安全だ。

 さらに豊洲は既に建設している。「サンクコスト論」や、安全対策などの追加的コストを見れば豊洲に軍配が上がる。

 これは、意思決定論に用いるサンクコスト論と科学的なリスク評価という客観的な根拠によるものなので、本来なら小池都知事はもっと前に決断すべきだった。

 すでに昨年3月に、築地から豊洲への移転は、東京都の条例で正式に決定されていた。 東京都議会で議決された「東京都中央卸売市場条例の一部を改正する条例」には、築地市場を廃止し、新たに豊洲市場を開設すると規定している。それにもかかわらず、小池都知事は都議会の意見を無視した。